日米首脳会談  貿易の原則を貫けるか

 米国のペースに翻弄されないか、心配だ。

 安倍晋三首相がトランプ米大統領とワシントンで会談した。

 焦点の日米貿易交渉について、トランプ氏は冒頭から「農産物の関税をなくしたい」と述べ、貿易収支の不均衡の改善を要求した。

 農産物関税については、首脳会談前に2回開かれた通商担当の閣僚級協議で、引き下げ幅を環太平洋連携協定(TPP)水準を限度にすることで一致していた。

 それにも関わらず、トランプ氏は関税ゼロに言及した上、交渉が5月にも合意に達する可能性も示唆した。

 安倍首相にとって今回の首脳会談は、6月の20カ国・地域(G20)首脳会合や夏の参院選に向け日米の緊密な関係を確認する狙いがあった。それだけに大統領の発言は、寝耳に水だったに違いない。

 とはいえ、トランプ氏の発言は米政権の本音の発露ともいえる。

 日本が米国抜きのTPPや欧州連合(EU)との経済連携協定(EPA)を発効させたため、牛肉や乳製品などの米国産農産物は対日競争力を落としている。

 2020年の大統領選で再選を狙うトランプ氏にとっては、共和党の伝統的な支持基盤とされる農業州の有権者にアピールする材料がほしいという思惑がある。

 首脳会談では「日本は米国産の農産物を買っていない」と不満をぶちまけた。

 米政権内には農産物の関税引き下げ幅を「TPP以上」とする声が強く、事前の閣僚級協議では米側から日本に対し「ボスが『とにかく早くまとめろ』と言っている」という要請が繰り返されたという。

 日本側には「単なる脅し」という受けとめもあるようだが、楽観的すぎないか。

 米国にとって対外貿易赤字の削減の「本丸」である対中国協議は妥結の道筋が見えていない。成果獲得を急ぐトランプ氏が今後、対日圧力を強める可能性は高い。

 気になるのは、安倍首相が自由貿易の原則を踏まえた主張をしたかどうかだ。

 首相は会談後、「ともにウィンウィン(相互利益)となる交渉を進める」と述べたが、実際には防戦一方でなかったか。

 米国は首脳会談の前日の日米財務相会談で、輸出に有利にするための為替介入を禁じる条項の議論を迫った。金融政策が米国に縛られかねない問題だ。安易な妥協は許されない。