東北に送るひな人形を見つめる布施さん(東近江市五個荘竜田町・東之湖)

東北に送るひな人形を見つめる布施さん(東近江市五個荘竜田町・東之湖)

岩沼市の子どもたちから届いた感謝のメッセージ

岩沼市の子どもたちから届いた感謝のメッセージ

 滋賀県東近江市の人形職人が東日本大震災で津波の被害を受けた宮城県岩沼市の人々に毎年、ひな人形を送っている。膠原(こうげん)病と闘う職人は、震災に負けず立ち向かう被災者の姿を自身と重ねて制作に励む。昨年は新型コロナ禍で断念したが、10回目となる今年、虹をイメージしたひな人形を届ける。

 東近江市五個荘竜田町のひな人形店「東之湖(とうこ)」の布施和信さん(50)。23歳のころに原因不明の皮膚のかゆみや痛みに悩まされ、膠原病と診断された。今もかゆみによる発熱などに苦しんでいる。

 岩沼市は震災で181人が犠牲になり、集団移転も強いられた。布施さんは、東近江市職員を通じて岩沼市の現状を知った。「健康だった僕と同じように、一夜にしてつらい状況になった人のために何かしたい」。震災翌年、初めて人形を送った。

 人形は、柔和な表情の女びなと男びな。「東北との懸け橋」をイメージし、地元で織られる5色の近江上布を使って虹のように色彩豊かな衣装に仕立てた。構想から10カ月で完成させた。

 市を通じて市内の児童施設や小中学校などに贈られたが、最初の3年は返事がなかった。「大変なときにありがた迷惑だったかも」と後悔し始めた4年目、「毎年楽しみにしています」と記された手紙が届いた。

 窓口の岩沼市防災課課長補佐の森俊幸さんは「10年も続けてもらい、ひな人形をもらった子どもらが元気をもらっている」と感謝する。布施さんは「10回は一つの節目だが、作れる限り送り続けたい」としている。