改装で空間が開放的になり、より幅広い年代の市民が集うようになった守山市立図書館(守山5丁目)

改装で空間が開放的になり、より幅広い年代の市民が集うようになった守山市立図書館(守山5丁目)

約100冊の本を積んだコンテナを船から島に降ろす市立図書館の職員ら(近江八幡市・沖島)

約100冊の本を積んだコンテナを船から島に降ろす市立図書館の職員ら(近江八幡市・沖島)

 木のぬくもりに包まれた開放的な空間は、居心地の良いカフェのようだ。わが子に絵本を読み聞かせる母親、机に向かい勉強する中高生、新聞に目を通すお年寄り―。2018年にリニューアルオープンした滋賀県の守山市立図書館には、幅広い世代の市民が集う。

 3人の子どもを育てる女性(41)=同市=は、改装前は同館をほとんど訪れたことがなく、隣の野洲市の図書館まで足を延ばしていた。今では毎週のように通い、コーヒーを飲みながら読書を楽しみ、貸室で開かれるイベントにも参加する。「(改装で)本を借りるだけの場所というイメージが大きく変わりました」

 充実したのは設備面だけではない。約30人の「中高生サポーター」の有志が推薦本のポップ(紹介カード)を作成。借りた書籍名と市販価格が紙の通帳に記される「読書通帳」も県内でいち早く導入するなど、若年層も含め図書館利用を促す取り組みを進める。

 滋賀県全体を見ても、この40年の図書館の発展ぶりと、県民の図書館への強い愛着がうかがえる。県立図書館(大津市)が移転・開館した1980年は県内に五つだけだった市町村立の図書館も、当時の武村正義知事が新設や図書購入で費用助成を翌年から開始。毎年のように新しい図書館ができ、全市町でこれまで計49館が整備された。今や、県民1人当たりの貸出冊数は7・72冊で全国2位(19年度日本の図書館統計)だ。

 「全ての県民に本を届ける」という県内の公立図書館の共通目標を象徴するような取り組みを展開している館もある。近江八幡市立図書館もそのひとつだ。

 近江八幡市に属する琵琶湖唯一の有人島・沖島は図書館がなく、市街地の市立図書館へも行きにくい上、漁業従事者は日中忙しいため読書の習慣があまりない人も。そこで19年度から始めたのが「沖島配本サービス」。隔月1回、職員らがコンテナに100冊ほど積んで船に乗り込み、現地で島民と対話しながら本を紹介する。

 昨年12月下旬、会場の「老人憩いの家」では手芸や健康、歴史など多彩な分野の本が長机に並べられ、島民が次々に訪れた。編み物の本を借りた女性(71)は「毎日漁に出て、島外でゆっくり本を選ぶ時間もない。ありがたい」と感謝する。司書の但田祐子さんは「少しずつ顔も覚えてもらえ、毎回楽しみにしてくれている人もいる」と手応えを感じている。

 今般の新型コロナウイルス禍や社会情勢の変化で、「来館しなくても図書館のサービスを受けられる」動きは今後も加速するだろう。それでも、県立図書館の大西良子館長は「届け方は変わっても本への思いは変わらない。利用者のニーズに丁寧に応えていきたい」と語る。