3月の完成に向けて作業が進む西本願寺の阿弥陀堂。金箔(きんぱく)を張る壁の下地処理が進められている=京都市下京区

3月の完成に向けて作業が進む西本願寺の阿弥陀堂。金箔(きんぱく)を張る壁の下地処理が進められている=京都市下京区

智積院の境内で進められる展示・収蔵庫の建設。境内5カ所の収蔵庫をまとめる狙いもあるという(京都市東山区、2021年12月撮影)

智積院の境内で進められる展示・収蔵庫の建設。境内5カ所の収蔵庫をまとめる狙いもあるという(京都市東山区、2021年12月撮影)

 京都市内にある本山や総本山の寺院で進められてきた大型の修復、建設事業が今年相次いで完成を迎える。いずれも巨額が投じられ、今年中には新しいお堂や展示施設などが拝める見通しだ。ただ、宗派の異なる各寺院の落慶(らっけい)(完成)時期が2022年に重なるのは、偶然の一致ではない。

 下京区の真宗興正派の本山・興正寺。高さ約28メートルの御影堂内には巨大な足場が組まれていた。18年の大阪府北部地震で折れた柱の修復などが約2億円をかけて進められ、10月に完了を予定する。

 浄土真宗本願寺派の本山・西本願寺(下京区)でも、国宝・阿弥陀堂内陣の修復工事が今年3月に終わる見通しだ。昨年までに完了した国宝「唐門」や「飛雲閣」の修復と合わせた総事業費は12億円。阿弥陀堂では、天井画や建具の修理などが行われ、現在は壁の金箔(きんぱく)が張り直され、次々と輝きを取り戻しつつある。

 浄土真宗だけでなく、真言宗の寺でも、今年は落慶が目立つ。

 真言宗智山派・総本山の智積院(東山区)では、長谷川等伯筆の国宝障壁画などを展示、収蔵する施設の建設や、金堂の修復といった境内の再整備が約14億円かけて進められ、いずれも今年中に完了を予定しているという。

 今年の京都市は「落慶ラッシュ」とも言える1年になりそうだ。

 宗派を超えて落慶が相次ぐ背景を取材すると、2023年に迎えるそれぞれの記念日が影響していた。

 一般的に仏教界では、宗祖らの命日や誕生日を重視し、50年に1回程度、記念法要などで大々的に顕彰している。浄土真宗では、1173年に生まれた宗祖・親鸞の生誕850年を23年に迎える。さらに24年には親鸞が根本聖典「教行信証(きょうぎょうしんしょう)」をまとめ、浄土真宗が誕生したとされる「立教開宗」から800年の節目にもあたる。

 そのため、真宗系の各派では、23年に両方の節目を記念する慶讃法要や関連事業を計画する動きが目立っている。お堂の改修などは法要に間に合わせる必要があるため、今年に工事完了を目指す寺が多く、「落慶ラッシュ」につながっている。

 真宗興正派では、文化財としての価値を損なわない工法の検討に時間をかけつつ、工期を決めるにあたっては「23年の慶讃法要には間に合わせたい」との思いがあったという。

 浄土真宗本願寺派では、宗派の10カ年計画の中で慶讃法要や新門主就任を内外に披露する伝灯奉告法要を重要行事に位置付け、阿弥陀堂の修復などを進めてきたという。

 同派では、50年前の生誕800年(1973年)で、親鸞が生まれた伏見区にある飛び地境内「日野誕生院」の本堂を修復。その本堂は、さらに50年前の立教開宗700年を契機に再建され、節目ごとに大規模な事業が展開されている。

 宗祖らの節目に大規模な工事が行われる理由について、ある宗派の関係者は「公的補助を受けても財政負担は大きい。大きな行事に合わせることで、寄付のお願いもしやすくなる」と指摘。文化財が多い寺社の工事は事業費が膨らみやすく、節目でもなければ着手しにくいという事情もある。