昨年10月に就任した岸田文雄首相の政権運営が本格化する。

 岸田氏は「丁寧で寛容な政治」を掲げて、政権発足直後の衆院選で勝利した。昨秋の臨時国会では政策対応の柔軟さや説明に注力する姿勢を強調した。

 ただ、「成長と分配の好循環」をはじめとする「岸田カラー」はまだ明らかになっていない。どう具体化していくのかが問われる。

 重要課題である新型コロナウイルスへの対応では、病床確保や水際対策の徹底を進め、ワクチン3回目接種の前倒しも決めた。対応が後手に回り、医療逼迫(ひっぱく)を招いた菅義偉前政権の反省を踏まえたようにみえる。

 「オミクロン株」の拡大は予断を許さない。感染状況を見据えた着実な対策が必要だ。

 看板とする「新しい資本主義」では、2022年度予算案などに看護師や介護士らの賃上げを盛り込み、賃上げした企業への税制優遇も打ち出した。分配政策を具体化させた形だ。

 だが、金融所得課税の強化が先送りされるなど、格差是正への対応策は十分とはいえない。

 団塊の世代が後期高齢者入りを迎えるが、社会保障費の抜本的な議論も手つかずである。

 22年度予算案は過去最大規模に膨らんだが、歳入の3割を借金でまかない、財政再建への配慮はうかがえない。

 岸田氏がどのような社会を目指しているのかは、いまだに見えてこない。大きな道筋を具体的に語るべきだ。

 年末にあった18歳以下への10万円給付の議論では、支給方法を巡って迷走した。岸田氏の「聞く力」が決断を鈍らせ、優柔不断さを露呈した印象だ。

 森友・加計問題や日本学術会議の会員任命拒否問題など、前任の安倍晋三・菅両政権の疑念にも岸田氏は十分に答えていない。

 丁寧な説明をすると言いながら不都合に頬かむりするようでは、信頼は取り戻せない。

 気になるのは、安全保障政策で強硬姿勢が目立つことだ。

 憲法の専守防衛の原則を逸脱しかねない「敵基地攻撃能力」保有を否定せず、中国の軍事的台頭を念頭に防衛費の大幅増加も打ち出した。

 憲法改正にも前のめりな姿勢を見せている。

 これらは国政の根幹に関わるテーマだけに、国民に丁寧に説明することが不可欠だ。

 7月には参院選がある。

 岸田政権が安定して継続するかどうかの節目となろう。

 野党第1党の立憲民主党にとっても正念場だ。

 泉健太代表は「政策提案型」を目指すが、岸田政権の政策は立民と重なる部分もある。どのような対立軸をつくるかが重要になる。批判する姿勢が弱まっては、野党の責任は果たせない。

 共産党などとの野党共闘の在り方や、日本維新の会、国民民主党との関係も焦点となる。

 安倍・菅政権は、異論に対して説明を尽くさず、誠実に向き合わない姿勢が批判を浴びた。

 岸田政権は国会でしっかりとした議論を重ねてほしい。