学生を武力弾圧した天安門事件(1989年)のような悲惨な事態に発展しないか。懸念が強まっている。

 政府への抗議デモが続く香港で先週、活動中にビルから転落した男子学生が死亡した。今週に入って、警官の実弾発砲を受けた男子学生が一時重体となった。

 発砲の様子を撮影した映像があり、警官は武器を持っていない学生に対し、ためらいなく銃口を向けていた。

 道路の封鎖や地下鉄の運行妨害といった過激な行動は、許されるものではないが、これに対する警察の強硬姿勢が、一段と目立つようになってきた。

 デモの参加者との対立は、明らかに激化している。

 中国批判を押さえ込む「逃亡犯条例」改正案への反発から、6月に始まった大規模デモを受けて、政府は9月になって同条例案を撤回した。

 だが、これは、中国の建国70年を祝う一連の行事に、香港の動きが水を差さないようにするため、一時的に譲歩しただけとの見方があった。

 撤回後、政府が、普通選挙の実現など市民や学生らの掲げる要求に応じる気配はない。逆に、デモの参加者を特定できるよう「覆面禁止法」を施行し、大勢の違反者を逮捕している。

 警官隊は、発砲だけでなく、催涙弾も使って、抗議行動をする若者らの排除に乗り出した。

 先の見方通りに、事態は推移しているといえよう。

 香港について中国共産党は、先月末の中央委員会総会で、「国家の安全を守る法制度を確立する」などの方針を決定した。

 抗議デモを、「北京の中央政府の権力に対する反抗」と位置づけて、政府機関や軍、国有企業の幹部らを対象に研修を行い、思想統一を図っている。

 研修では、英国からの返還時に「一国二制度」として香港に認めた高度な自治は、「完全な自治」を意味するのではないと主張し、中国には香港の緊急事態に介入できる「管轄統治権」がある、と強調しているという。

 しかし、このような考え方は、デモの参加者だけでなく、香港の市民社会全体からも、認められないのではないか。

 政府が暴力を伴ってデモなどの鎮圧を進めても、反発は強まる一方だろう。これ以上、大勢の犠牲者が出る事態だけは、避けることを考えておくべきだ。