東京・永田町で現代貨幣理論(MMT)に注目が集まっている。日本のように自国通貨建て国債を発行している場合、債務不履行はあり得ないので財政赤字の拡大に問題はないという理論で、米国で論争が盛んになっている。日本でも国会の質疑や議員勉強会で取り上げられ、京都の国会議員が中心となって動く。財政健全化が悲願の財務省は、反論資料を提示するなど警戒を強めている。

 「天動説から地動説に転換することが一番大事だ」。4月4日の参院決算委員会で、自民党の西田昌司参院議員(京都選挙区)が語気を強めた。日本は長年にわたって政府債務が増え続けているが、危惧された国債金利の上昇や円の暴落が起きていないと指摘。従来の財政理論では説明がつかないとして、政府にMMTの「正しさ」を訴えた。

 MMTは経済学者のケインズやシュンペーターらの業績を基礎として、1990年代に理論体系が確立したとされる。今年1月、史上最年少で米国の下院議員となり、将来の女性大統領候補との呼び声もあるアレクサンドリア・オカシオコルテス氏(民主党)が支持を表明し、論争が繰り広げられるようになった。

 主張の柱には「自国通貨建て国債の債務不履行はない」との考えとともに、「貨幣とは民間銀行が貸し出しという形で創造する」という「信用貨幣論」がある。デフレ是正のためには銀行の貸し出しが増えるよう、国債発行による財政出動で需要を拡大するべきとする。西田氏は質問で「官僚やインテリは考え方を変えられない。私は異端だと言われてもやっていく」と強調した。

 22日に衆院第2議員会館で開かれた若手自民議員の勉強会「日本の未来を考える勉強会」は、MMTの論客である評論家の中野剛志氏を招いた。主宰するのは安藤裕内閣府政務官(衆院京都6区)。MMTを取り上げるのは3回目だ。参加した10数人の中には新顔もいて関心の高まりを感じており、「黙っていたらMMTは党内議論の俎上(そじょう)に乗らない。理解を広めるための動きを取っていきたい」と意気込む。

 こうした動きを財務省側は突き放す。麻生太郎財務相は西田氏の質問に対して「常識的にはインフレが起こる」と懸念を示し、「財政規律を緩めると危険だ。日本を(MMTの)実験場にする考え方を持っているわけではない」と強調した。同省は17日の財政制度等審議会分科会の資料で、MMTに批判的な欧米の経済学者や金融当局者のコメントを17人分も紹介した。10月の消費税増税の必要性をぐらつかせるMMTに対して、警戒感が強くうかがえる対応だ。