核兵器を保有する米国、中国、ロシア、英国、フランスの五大国が、核戦争回避とリスク軽減を最も重要な責務だとする共同声明を発表した。

 「核戦争に勝者はおらず、決して戦ってはならない」と、冷戦末期の米ロ首脳で出された理念を引用して、自戒する姿勢を見せた。

 年初に開幕予定だった核拡散防止条約(NPT)再検討会議に向けて用意したとされる。

 五大国が今後も核不拡散体制で協力するとの共同声明は異例で、一定の意義はあろう。

 ただ、高らかな理念の一方で進められている核軍拡に、非核保有国などは懐疑的な目を向けている。求められるのは、停滞している核軍縮を実現するため、具体的な行動で示すことだ。

 声明は核戦争の甚大な被害に触れつつ、核兵器の使用目的を「防衛、侵略の抑止、戦争防止」に限るべきと核抑止策を正当化した。

 NPTは国連加盟国の大半が参加する。核兵器保有を5カ国に限定して認める代わりに核軍縮の交渉を行う義務を課している。五大国はその義務を守ることも強調したが、実効性は見通せない。

 一方、核兵器を違法とする核兵器禁止条約が昨年発効し、今年3月に第1回の締約国会議を開催する予定だ。

 共同声明は、厳しい国際世論からの圧力の高まりに対し、五大国への批判をかわして既得権益を守る狙いがあろう。

 現実は、米中ロ間で極超音速兵器を含む核開発競争が激化しており、声明との乖離(かいり)は大きい。NGOの核兵器廃絶国際キャンペーン(ICAN)は「全く逆のことをしている」と批判している。

 前回2015年のNPT再検討会議は最終的な合意文書を採択できなかった。

 他の核保有国であるイスラエル、インド、パキスタンは未加盟で、北朝鮮は脱退した。NPTの形骸化が懸念される。五大国が核軍縮の範を示すべきではないか。

 米バイデン政権は「核兵器のない世界を目指す」と公言し、核兵器の役割縮小を模索するが、実現は不透明だ。大多数の核弾頭を保有する米ロの責任が問われる。ロシアは中国とともに核戦力を増強しており、米ロが実際に協力しようとの機運は乏しい。

 再検討会議は今年8月開催で調整している。唯一の戦争被爆国である日本も核軍縮・核廃絶に向けて道筋を示し、仲介する役割を果たすべきだ。