トランプ前米大統領の支持者らによる連邦議会議事堂の襲撃から1年が経過した。

 大統領選の当選手続きを暴力で破壊しようとした民主主義への攻撃であり、米国社会に大きな衝撃を与え、威信低下を招いた。

 だが、トランプ氏を支持する共和党員の多くは、今も大統領選に不正があったと信じているという。社会の分断はさらに深まっており、民主主義の立て直しは遠い。

 襲撃では、ホワイトハウス前で演説したトランプ氏が、議事堂に向かうよう訴え、支持者らが議事堂内に乱入し警察官を含む5人が死亡した。

 事件後、米議会下院は「反乱扇動」の責任を問い、トランプ氏を弾劾訴追した。だが、与野党が拮抗(きっこう)する上院は、弾劾裁判で無罪の評決を下した。

 今秋の中間選挙を見据え、共和党支持者の間で強い人気を保っているトランプ氏の影響力を考慮したとみられ、議会として一致した態度を示すことはできなかった。

 下院特別委員会は、トランプ氏の関与の実態解明や責任追及を続けている。関係者から資料や証言を収集し、夏までに中間報告書、中間選挙前までに最終報告書をまとめるとしている。

 だが、トランプ氏らは資料の提出を拒むなど徹底抗戦しており、解明は難航しそうだ。

 気掛かりなのは、米国内で投票権を制限する動きが広がっていることだ。

 郵便投票の手続きを厳格化したり、投票所の開設時間を短縮したりする法案が昨年、全50州のうち19州で30以上成立したという。バイデン大統領に投票した人の約6割が郵便投票を利用したことなどから、「不正の温床だ」と繰り返すトランプ氏の主張に便乗する形で共和党陣営が進めている。

 投票権の制限は、公平な選挙制度の根幹を揺るがす。民主主義に対する信頼を損ないかねない。

 バイデン氏は昨年12月、「民主主義サミット」を初開催し、中国やロシアを念頭に「民主主義の後退」への危機感を訴えたが、自国の民主主義が揺らいでいては国際社会への説得力も弱まる。

 襲撃事件から1年となった6日、バイデン氏は政治目的の暴力を拒絶するよう国民に訴えた。

 ただ、分断の背景にある所得格差や人種差別に対し具体的な解決策を示せているとはいえない。

 党派の対立を超え、民主政治の再建に踏み出せるかどうかが問われている。