「職場は、地球と宇宙。国際宇宙ステーションへの単身赴任や、月面基地への長期出張もあるかもしれません」―。

 こんなキャッチコピーで宇宙航空研究開発機構(JAXA)が13年ぶりに宇宙飛行士候補の公募を始めた。

 「理系の大学卒」限定を撤廃するなど応募条件を大幅に緩和した。有人月面探査を見越し、多彩な人材を確保するのが狙いだ。大胆な門戸開放であり、多くの若者に宇宙の可能性に挑んでもらいたい。

 1992年9月、毛利衛さんが日本人の飛行士として初めて米国のスペースシャトルで宇宙へ飛び立ってから間もなく30年になる。JAXAの飛行士はこれまでに第1期の毛利さんら11人を数え、国際宇宙ステーション(ISS)での活動など着実に成果を上げてきた。

 だが、2009年にISSに搭乗する候補者3人を採用後、日本人飛行士は定年退職に伴い減り続け、現役は7人。平均年齢は52歳とかなり高い。

 日本は現在、ISSに飛行士を送っているほか、米主導で月探査を目指す「アルテミス計画」への参加を決めている。日本人が月面に立つ日も遠くないかもしれない。

 しかし、このままでは月面活動が本格化する30年には2人だけになる。今後、日本の飛行士が活躍する場面が増えるとみられ、世代交代は待ったなしだ。

 JAXAは3月4日まで応募を受け付け、来年3月ごろ、若干名を合格させる予定だ。訓練を積み、25年3月ごろに宇宙飛行士に認定されるという。

 宇宙空間で働く飛行士は、任務への適応力や協調性、リーダーシップ、語学力などが求められ、従来は科学者や医師、エンジニア、航空機パイロットといった理系出身者に限られた。

 応募資格が「四年制大学(自然科学系)卒業以上」などとされていたためで、今回は「3年以上の実務経験」のみに変更。宇宙船の改良が進み、身長制限を緩和、体重も問わない。

 女性や小柄な人も応募しやすく、宇宙に憧れる多様な人材の発掘につながるに違いない。

 今や民間の宇宙ビジネスで一般客を乗せた宇宙飛行さえ実現している。誰もが宇宙旅行を夢見られる時代にふさわしい柔軟な判断と言える。

 ただ一定の飛行士数を維持するには、継続的な養成が課題となる。米国やロシアは数年ごとに採用しているが、日本では過去5回の募集が2年半~13年ぶりと不定期だった。これでは応募に備えるのが難しい。

 JAXAは今後、5年に1回程度の頻度で募集する方針という。日本が本格的に宇宙事業に取り組み、優秀な人材を確保したいのであれば、定期採用化は必須であろう。

 とはいえ宇宙探査には巨費が見込まれる。飛行士の育成にも数億円かかる。目的や費用対効果について国民的な理解が欠かせない。

 そのためにも、複雑な機器の操縦や医学実験などの素養に加え、分かりやすい言葉で情報を発信できる能力もより重要となる。宇宙飛行士の仕事が広がるにつれ、多様、多彩な人材が求められよう。