皇太子さまはきょう、新しい天皇に即位された。「令和」時代が幕を開けた。

 新陛下の誕生日は1960(昭和35)年2月23日で、年齢は59歳である。前天皇陛下が即位されたときは55歳だった。それより年配になっての即位である。

 「国民に寄り添い、人々と共に喜び、あるいは共に悲しみながら、象徴としての務めを果たしたい」。今年の誕生日に先立ち、新陛下は記者会見でこう語られた。

 父である前陛下の歩みを踏襲し、発展させる覚悟を示した。原稿に触れる手がわずかに震え、いつになく緊張していたという。重責を感じてのことに違いない。

■時代の風に向き合い

 一方で「その時代時代で新しい風が吹く」との発言もあった。過去や伝統だけにとらわれるのではなく、即位後の時代に柔軟に対応していく考えを示した。

 今の時代にふさわしい、新たな象徴の在り方を模索してほしい。それは、多くの国民の思いとも重なるのではないか。

 新陛下が幼少期を過ごしたのは60年代である。日本は戦後の復興を終え、高度経済成長期だった。いうまでもなく、戦時中だった前陛下の子ども時代とは大きく様相が違っている。

 83年から2年間、英国のオックスフォード大に留学した。その経験をつづった「テムズとともに」と題するエッセーを読むと、親元を離れた外国での生活がいかに貴重だったかが伝わってくる。

 忙しい研究のかたわら、ときには友人らと街に繰り出し、ディスコで踊ることもあった。堅苦しい皇室のイメージから離れ、異国で奮闘する一人の日本の若者の姿が浮かび上がる。

 前陛下は昭和天皇の時代から続く「負の遺産」に向き合い、前皇后美智子さまとともに海外の戦地や沖縄に赴いた。新陛下が踏襲したいと考えるのは、そうした両親を深く尊敬するからだろう。

■国際親善に期待高く

 だが、もちろん親と同じである必要はない。平和な時代に育った新陛下らしく、等身大の姿で臨めばいいのではないか。

 皇室に関する日本世論調査会の全国調査(2018年12月)によると、新天皇に期待する活動として「国際親善」を挙げた人が46%と最も多く、「被災地のお見舞い」(42%)を上回った。

 国際親善に期待した人を世代別で見ると、新陛下と同世代の50代を中心に中高年層の割合が高い。新皇后雅子さまが元外交官であることも支持につながったとみられる。

 前陛下の被災地訪問は高く評価するが、次は災害自体がない時代であってほしいという国民の願いが反映されたのかもしれない。前陛下とは別の「新しい活動」を期待する意見も多かった。

 国内外ともに国際化や多様化のうねりが社会を激変させていく時代である。象徴天皇に何ができるか考えるとき、若い頃の英国体験もきっと支えになる。

 一方で、天皇制そのものに批判的な意見もある。民主主義との矛盾を指摘する声もある。

 天皇制というと、かつては極めて政治的なテーマのように扱われ、硬直的な主張をする人も多かった。昭和が終わる頃、天皇の容体などを巡る「菊のカーテン」の閉鎖性にうんざりしたことを覚えている人もいるだろう。

 憲法で天皇は「国民統合の象徴」とされている。本来は主権者である国民が率直に語り、探っていくべき存在のはずだ。

 偏見や過剰な賛美などではなく、天皇制の評価や問題点について自由に論じ合う。新陛下とともに、そんな当たり前のことができる時代にしていきたい。

 新陛下は生活に不可欠で、環境や災害にもつながる「水」に絡む問題の研究をライフワークにしている。これを切り口に新たな公務を模索していく考えだ。

■水問題から学ぶこと

 京都市で03年に開かれた第3回世界水フォーラムで名誉総裁を務めた。記念講演では、古代と中世の琵琶湖・淀川水運を中心に、京都と地方を結ぶ水の道というテーマで話した。

 それ以降、国際会議などで積極的に発言してきた。水問題を考えるきっかけは1987年のネパール訪問で、水くみに膨大な時間を費やす女性や子どもの姿を見たことだという。

 だが先の世論調査をみると、そうした活動は国民にあまり知られてない。「国際親善」とどう結びつけ、国民にアピールしていくかが問われよう。

 2009年の誕生日会見では、水問題の解決について「貧困を改善し、紛争を解決するという世界の平和へとつながると思っています」と述べた。どんな人にも関わりのある水という存在に、どこか象徴天皇と通じるものを感じているのかもしれない。

 公務で忙しくなるだろうが、ぜひ研究も充実させてほしい。令和という新しい時代を歩む上で、水が教えてくれることはきっとたくさんあるはずだ。