気ままな1人暮らしの頃、家事は何とでもなったし、いい加減でも特に困ることはなかった。しかし妻、親になり、自分以外の人をケアする立場になると、「家事は生きる土台」であることを強く実感するようになった。と同時に、夫との家事分担に悩みを深めるようになった。私は、分担に真摯(しんし)に向き合ってきたある夫妻を訪ねた。(京都新聞・中村幸恵)

■緩やかな家事分担、でも当初は息が合わなかった夫妻

台所に並んで立つ西條さん夫妻。食事を作る裕一さんを加奈恵さんが手伝う(京都市上京区)

 カボチャの煮付けを作る傍ら、豚肉のしょうが焼きが出来上がってきた。フライパンを振る西條裕一さん(52)=京都市上京区=に、妻の加奈恵さん(53)が「焼きやすい?」と尋ね、食器を出す。30分ほどで食卓に5品が並んだ。

 夕飯作りや片付けは公務員の裕一さん。団体職員の加奈恵さんは洗濯物や弁当作りをする。手が空いたら一緒に家事をする緩やかな分担制。ただし、結婚当初から息が合っていたわけではない。

■今でも忘れられない、夫の”わかってない”一言

 「家にいるんやったら、家事できるんちゃう?」

 加奈恵さんは、長男の育休中だった26年前に裕一さんが口にした一言が今でも忘れられない。

生後9カ月の長男に離乳食を与える加奈恵さん。生後6カ月ごろから、裕一さんにも育休を取ってほしいと強く思うようになった=1996年(西條さん提供)

 あの頃、仕事を離れる不安を抱えつつ初めての育児に緊張していた。2時間ごとに泣く長男の授乳やおむつ交換で体も頭もふらふら。洗い物や洗濯物がたまっていく様子を見かねた夫が発した言葉に、「いつかまた子どもが生まれたら絶対裕一さんにも24時間、一緒に過ごしてもらう」と心に誓った。

■夫の育休、3カ月ワンオペを体験してもらった

 それから5年。第3子の長女を妊娠後すぐに夫に育休を取るよう提案する。給料は夫の方が上だったが、「授業料」を払ってでも経験させたかった。

 裕一さんは以前から、加奈恵さんが土日や夜9時まで勤務する日は家事や育児をこなし、保育園の送り迎えもした。だから、育休を勧められても抵抗なく受け入れられた。「趣味の時間もつくれるかなと思った」

■現実を知った夫「かわいい長女と遊んだ記憶ない」

 ところが、加奈恵さんが産後9カ月で仕事を再開していざ育休が始まると、次男を保育園に送り届けてから、朝ご飯の片付け、洗濯、長女の離乳食、夕飯の準備、次男のお迎えと、あっという間に一日が終わった。育休中の3カ月間、かわいい盛りの長女とのんびり遊んだ記憶もない。

 「ひどいこと言ったと重々分かりました」

長女が生まれ、裕一さんが育休を取った2003年当時の写真。先進的な例として、京都新聞が取材した際に撮影していた