あたりまえのようにあって、慣れ親しんできたみどりや水、空気が、重大な危機にさらされている。そう思わせる出来事が続いている。

 滋賀県最北部に位置する長浜市余呉町は、西日本で唯一「特別豪雪地帯」に指定されている。

 1981年には6メートル55センチの大雪を記録した。

 ところが、この冬はかつてないほど雪が少なかった。最も雪が多い地域でも77センチで、例年の1割程度にとどまり、観測史上、最小となった。

 湖北で林業を営む山路武さん(68)は「生活は楽だったが、こんなに少ないと、今後、悪影響が出ないか心配だ」と話す。

■これまでにない暖冬

 懸念される影響の一つが、山林や田畑の獣害増加だ。

 環境省は野生生物の個体数の増加の一因として降雪の減少を指摘している。雪が少ないとイノシシやシカなどの子どもが生き残る確率が高いからだ。

 暖冬は琵琶湖にも大きな影響をもたらしている。

 琵琶湖で、酸素を多く含む表層の水が湖底深くまで行き渡る現象「全層循環」がこの春、完全には起きなかった。観測を始めた79年以降、初めてのことだ。

 全層循環は、冬場に冷えて重くなった表層の水が沈下して底の水と混じる現象で、「琵琶湖の深呼吸」とも呼ばれる。

 琵琶湖で最も深い高島市今津沖の地点では、水深90メートルだが表層の水は80メートルにまでしか届いていなかった。

 同じように暖冬だった2007年には、湖底で生息するスジエビなどが大量死した。今回、滋賀県は「未知の事態」として酸素濃度の調査回数を増やしている。

 琵琶湖の健康状態は京都を含む近畿全体の問題だ。周辺の山々に降雪が少なかったことが、琵琶湖にどう影響するかも心配だ。

 暖冬は昨年12月から今年2月にかけて全国的に続いた。西日本は平年より平均気温が1・3度高く、東日本でも平年を1・1度上回った。気象庁の指標ではいずれも「かなり高い」部類になる。

 地球規模でみると、ほぼ同じ時期に北米で記録的な寒波が到来し、オーストラリアでは最高気温46・6度の暑さを記録するなど、各地で異常気象に見舞われた。

 世界気象機関(WMO)によると、北極地方で大量の氷河や雪が溶け、世界規模で気象パターンに変化をもたらしているらしい。

 WMOの観測では、18年の世界平均気温は観測史上4番目に高く、長期的に気温は上昇しているという。

■先進国も「適応」急務

 地球温暖化の進行で懸念されるのは気温上昇だけでなく、これまでにない異常気象や気象災害の発生だ。

 温暖化問題は従来、先進国にとっては二酸化炭素(CO2)などの排出抑制策が課題で、実際に起きている被害にどう対処するかという「適応」策は発展途上国の課題とされてきた。しかしこの数年、先進国でも「適応策」への取り組みが急務なことが明らかになっている。

 日本でも昨年、台風21号がこれまでにない強さとルートで近畿地方を襲うなど、気象現象の変化が顕著だ。

 国は昨年、気候変動適応法を施行した。農林水産業などについて「適応計画」を自治体に作るよう促し、京都府や京都市は研究会、滋賀県は「適応センター」を設置した。  防災や産業政策など、幅広い政策に温暖化対策の視点を取り入れる必要が出てきたといえる。

 世界の科学者が参加する「気候変動に関する政府間パネル(IPCC)」は昨年、世界の温室効果ガス排出が現状のペースで進むと、40年後に世界の平均気温は産業革命前より1・5度上昇する、と予想する報告書をまとめた。

■京でIPCCの総会

 猛暑や豪雨、干ばつなどのリスクが上昇し、健康や経済への悪影響が増える可能性が極めて高いと指摘している。

 そのIPCCの総会が6日から京都市で開かれる。

 京都議定書に変わる新たな国際枠組み「パリ協定」は今世紀後半に世界の温室効果ガス排出を「実質ゼロ」にする必要があるとしている。

 IPCC総会では、パリ協定に基づき各国がどのくらい排出を削減できるかを算定する技術的方法が議論される。

 科学的知見と国際協調に基づいた環境政策の重要性を改めて確認する機会としたい。

 きょうは「みどりの日」。祝日法では「自然に親しむとともにその恩恵に感謝し、豊かな心をはぐくむ」とされる。

 日ごろ親しんでいる身近な自然環境が、地球規模の環境異変と切っても切れない関係にあることを忘れないでいたい。

 視線と思考を広く持ち、それぞれの地域での取り組みにつなげよう。