多数の犠牲者が出ることは避けられなかったのか。

 中央アジア・カザフスタンで政府への大規模な抗議デモが広がり、治安当局による発砲などで、164人の死者が出たと伝えられている。旧ソ連からの独立以降では最悪の事態となった。

 デモ隊が暴徒化したとはいえ、警告なしの発砲で武力鎮圧した政府の責任は極めて大きい。

 同国のトカエフ大統領は「周到に準備された組織的なテロ攻撃だった」などと主張するが、詳しい根拠は明らかにしていない。政府に批判的な国民への強権的な弾圧は認められない。

 抗議デモは、液化石油ガス(LPG)の価格が約2倍に引き上げられたことがきっかけとされる。2日に西部の町で発生し、全土に広がった。

 ソ連時代末期から最高権力者として君臨してきたナザルバエフ前大統領やその家族による長期支配への閉塞(へいそく)感も背景にあるようだ。選挙を経ずに2019年に後継大統領となったトカエフ氏も側近の一人だった。

 最大都市アルマトイの国際空港の占拠や相次ぐ放火などの混乱に対し、政府側は、ロシア主導の軍事同盟である集団安全保障条約機構(CSTO)に軍の派遣を要請した。

 ロシアのプーチン大統領はすぐに精鋭部隊を投入し、重要施設の警備などに当たらせた。重要な同盟国であるカザフスタンの体制が反政府デモで揺らげば、20年以上にわたって最高権力者の座にある自身の立場に悪影響を及ぼすと考えた、との見方もある。

 今回のデモでは、多数の死者が出たほか、拘束された市民も約8千人に上るという。軍事力で市民の不満を封じ込めようとする動きに対し、欧米諸国は警戒を強めている。欧州連合(EU)やフランスは「暴力の停止と自制」を呼び掛け、米国はCSTOの派兵に対して明確な説明を求めた。

 気がかりなのは、「秩序は完全に回復された」とするトカエフ氏が、独裁的な傾向を強めることだ。デモを鎮圧する過程で、ナザルバエフ氏が「終身議長」だった安全保障会議の議長職も掌握した。

 政府への抗議活動を巡っては、近隣のベラルーシでも、当局側がデモの参加者や政権に批判的なジャーナリストを拘束しており、米欧が制裁措置を講じている。

 市民の人権が守られるよう、国際社会は働きかけを続ける必要がある。