日本とオーストラリアの両政府が、自衛隊と豪軍部隊の共同訓練などに関する「円滑化協定(RAA)」を締結した。

 日本がこうした内容の協定を結ぶのは、日米地位協定以外では初めてだ。東・南シナ海で軍事的圧力を増す中国に対抗した連携強化策の一環といえる。

 ただ、自衛隊と外国軍との共同・一体化がなし崩し的に広がる懸念もある。専守防衛の原則を逸脱しないか、注視する必要がある。

 RAAは、共同訓練などで部隊を派遣する際に、船舶や航空機の往来や隊員の入国時の手続きなどを簡素化する内容を盛り込んだ。安保協力が容易になるという。

 締結交渉の開始は2014年に決まったが、派遣部隊が受け入れ国で起こした犯罪の裁判権を巡って豪側が日本の死刑制度に懸念を示し、協議が一時難航した。

 法制度の違いなどで曲折を経た形だが、日本政府はこの協定をモデルケースに、他国とも締結を目指すという。すでに英国とは昨年10月に交渉入りし、フランスも締結に意欲を見せている。

 中国を念頭に置いた防衛協力の枠組みはこれだけではない。

 昨年はインドとの間で物資や役務を融通し合う物品役務相互提供協定(ACSA)が発効、ドイツと機密情報の交換を可能にする情報保護協定を結んだ。インドネシア、ベトナムとは防衛装備品・技術移転協定を締結している。

 日米豪印の協力枠組み「クアッド」や、米英豪で軍事的連携を図る「AUKUS(オーカス)」も含め、アジア太平洋地域で中国包囲網が加速している。

 こうした動きに、中国は強く反発する。米中が激しく覇権を争う中、安全保障への備えがかえって対立を先鋭化させかねないことを頭に入れておく必要があろう。

 中国は国防費を30年間で約42倍に増加させ、海洋進出への野心を隠さない。包囲網の背景に周辺国や欧米の強い懸念があることを、中国政府は認識するべきだ。

 RAAなどでの協力が中国抑止にどれだけ実効性を持つかは読み切れない。欧州各国は地理的に遠く、米国以外は日本と同盟関係にもない。有事の際にどう関わるかは不明だ。

 矢継ぎ早に進められる各国との防衛協力について、日本国内で議論が低調なのが気になる。

 その役割や効果について政府が説明を尽くし、国会での論戦を通じてしっかりと課題を掘り下げることが欠かせない。