配偶者の転勤や親の介護などに対応するため、勤め先を変えたい人は少なくない。

 ANAホールディングスが、グループ内での転籍によって、地方への移住を認める「ワークプレイス選択制度」を、2022年度中に導入することになった。

 働く場所を、社員が選べる仕組みとなるそうだ。今後の成果を注目したい。

 制度が導入されるのは、中核の全日本空輸をはじめとする約40社で、パイロットを除く正社員約3万8千人が対象となる。

 一時的な転勤や出向ではなく、永続的な地方移住を原則とし、転籍後は元の会社に戻れない。

 転籍先は、各地の空港で旅客サービスや地上支援業務を行う運営会社が想定されている。

 賃金が下がるケースもあろう。だが、希望者が生活設計に合わせて申請できるというから、使い勝手はよさそうだ。

 導入の背景には、新型コロナウイルス禍に伴う業績悪化があったとみられる。全日空では給与カットにより、優秀な中堅や若手社員の退職が相次いだ。

 地方に移住して仕事を続けたくても、これまでは別会社への転籍が難しかった。そこで、新たな制度を設け、人材流出に歯止めをかけることにしたという。

 ただ、希望通りの職場に移れるかどうかは、不透明だ。受け皿を十分確保できなければ、制度は機能しないだろう。

 働く場所を選択できるようになる企業は、ANAグループに限らない。

 国内のグループ従業員が約18万人いるNTTは昨年、社員の望まない転勤や単身赴任をなくしていく方針を打ち出した。

 ヤフーは今週、約8千人の従業員が国内ならどこでも住める制度を、4月に始めると発表した。

 リモートワークの普及している通信・IT業界では、勤務する場所にこだわらない働き方が、すでに「ニューノーマル」となりつつあるようだ。

 政府は2014年に「地方創生」を掲げ、地方への移住や企業の地方移転を促してきたが、大きな成果を上げたとはいえない。移住先での就業が、最大の課題となっている。

 このため、東京一極集中は解消されず、都心部の住宅価格が高騰し、コロナの感染リスクは大きいままである。

 働く場所を選択できる仕組みの成否を見極め、有効な施策につなげてもらいたい。