来店した鴨沂高卒業生らと思い出話に花を咲かせる博基さん(右)と経子さん(右から2番目)=京都市中京区、ハイ・どうぞふしみや食堂

来店した鴨沂高卒業生らと思い出話に花を咲かせる博基さん(右)と経子さん(右から2番目)=京都市中京区、ハイ・どうぞふしみや食堂

 京都市上京区の鴨沂高の校舎改築に伴い、惜しまれながら閉鎖された学生食堂を経営していた夫婦が、中京区のJR二条駅近くで食堂を始めた。2人を慕う卒業生や教員が続々と訪れ、思い出や近況を語り合いながら懐かしい味に舌鼓を打っている。

 同高出身の前川博基さん(67)と妻の経子さん(64)=中京区。博基さんの父親から、同高の食堂経営を引き継ぎ、2018年7月までの37年間、調理場に立ち続けた。

 学生食堂は、明るく包容力のある2人の人柄と、安くてボリュームのある手作りメニューを求める生徒や教員で毎日あふれていた。夫婦も、新入生の顔と名前を覚えたり、会話のきっかけにしたりするため、食券の裏に購入者の名前を書き、食事が出来上がったら親しみを込めて呼んだ。部活動の試合に足を運んだこともある。

 だが校舎の改築を機に、学生食堂は幕を下ろすことになった。生徒と卒業生に加え、保護者や教員も存続を要望して大規模な署名運動を展開したが、かなわなかった。

 食堂を通じて多くの人と交流してきた2人は、再び調理の仕事で地域に貢献したいと思い立つ。昨秋、自宅近くの木造家屋で毎週土曜に子ども食堂を開いているNPO法人「ふれあいほうむ“どうぞ”」の代表小林敬子さん(69)を訪ねた。小林さんは以前、障害のある人も働く配食とランチの店を運営していたため、夫婦の思いを聞き、食と絵本で人をつなぐ同法人の活動の一環として、土曜以外は一般向けの食堂を運営してもらうことにした。

 店の名前は同法人と学生食堂の屋号にちなんだ「ハイ・どうぞ ふしみや食堂」。2月の開店以降、SNSなどで夫婦の活動を知った卒業生や教員らが続々と来店、現在でも1日に1組は訪れるという。店内に置かれた食堂への思いをつづるノートには、「やっぱりこの味!」などと書かれている。

 ランチを食べに来た卒業生の看護師の女性(33)=左京区=は「2人は第二のお父さんとお母さんで、食堂はみんなが自然と集まる場所だった」と振り返る。同高の元数学教師の男性(67)=右京区=は「生徒を一緒に育ててる同志のような存在だった」と話す。

 博基さんは「私たちこそ、みんなから元気をもらっていた」と笑顔で応え、経子さんは今後について「誰でも気軽に集えてほっとできるスペースでありたい」と話す。午前11時半~午後6時。同食堂075(821)7060。