衰弱が進む青蓮院のクスノキ(京都市東山区)

衰弱が進む青蓮院のクスノキ(京都市東山区)

クスノキの現状を憂い、論文にまとめた金坂名誉教授

クスノキの現状を憂い、論文にまとめた金坂名誉教授

 京都市東山区の青蓮院で、市天然記念物に指定され、シンボルとなっているクスノキの衰弱が進んでいる。この現状を、京都大名誉教授で地理学者の金坂清則さん(71)=同区=が「青蓮院の受難の樟(くすのき)を巡って」と題して論文にまとめた。画家東山魁夷や文豪川端康成らを魅了した「宝樹」の危機を多くの人に知ってもらい、「生きながらえる方策を考えてほしい」と訴える。

 金坂さんは英国の女性旅行家イザベラ・バードの研究で知られ、京都地名研究会副会長を務める。論文は先月28日に発行した会誌「地名探求」に特別寄稿として寄せた。

 青蓮院のクスノキは樹齢800年と伝わる。全部で5本あり、特に衰えが著しいのが神宮道沿いの入り口に立つクスノキで、2017年から目立ち始めた。論文では2002年と昨年4月、今年3月に撮影した写真を比較掲載し、樹勢が衰え本来の緑葉がほとんどない現状を示した。

 また、文化・歴史的価値にも言及。東山魁夷が、川端康成から「京都はいま描いておかないとなくなります。京都のあるうちに描いてください」と促され、「年経る樹」として作品化した点を記した。川端自身も著作「古都」で登場させており、ノーベル賞授賞式に旅立つ直前、クスノキを見に京都を訪れた逸話も紹介。このほか、「上杉本洛中洛外図屏風(びょうぶ)」に描かれていることなども挙げた。

 一方、近年の衰弱の要因を老齢や台風などのほか、神宮道で通行量が増えた観光バスによる排気ガスの影響の可能性も指摘する。

 青蓮院も衰弱の原因は明確でないとしつつ、クスノキの大敵である外来カメムシの影響が一因と考えられるとし、樹木医や庭師らと相談して対策を講じてきたという。「樹勢の良くない状況が今後も続いていくことになるが、あらゆる手立てを尽くしていきたい」としている。