北朝鮮が日本海側で発射した飛翔体が、短距離弾道ミサイルである疑いが出ている。事実であれば、弾道ミサイルの発射を禁じた国連安全保障理事会の制裁決議に違反する。

 だが、現時点で米国や韓国は強い非難よりも慎重な対応ぶりが目立ち、北朝鮮との非核化交渉の継続を優先しているようだ。

 このタイミングで安倍晋三首相は、条件を付けずに北朝鮮の金正恩朝鮮労働党委員長との会談を目指す考えを表明した。

 日本人拉致問題の進展を開催の前提条件とした従来方針の事実上の転換といえる。

 直接交渉は重要だが、日米韓の政権が外交的成果を示そうとするあまり、危険行為を見逃すのであれば本末転倒だ。挑発行動を激化させないよう動向を見極め、的確に対処することが求められる。

 韓国国防省によると飛翔体は最長240キロ飛行し、専門家からロシアの短距離弾道ミサイル「イスカンデル」に酷似していると指摘されている。

 発射は、核実験や大陸間弾道ミサイル(ICBM)発射実験の停止を宣言した後も軍備強化を進めていると印象づけ、制裁圧力を維持する米国や韓国をけん制する狙いだろう。

 同時に、米本土に届かない「グレーゾーン」の発射で米朝交渉への直接的影響を避けつつ、出方を探る思惑がうかがえる。

 金氏は2回目の米朝首脳会談の決裂後、ロシアに接近して4月下旬にプーチン大統領と会談したが、目立った成果は得られなかった。トップ外交の手詰まり打開を考えたのかもしれないが、危険な瀬戸際外交を繰り返しては、求める制裁解除の展望を開けないのは明らかだ。

 北朝鮮側の真意が読み切れない中、安倍氏は金氏との首脳会談開催に「あらゆるチャンスを逃さない決意で問題解決に当たる」と前のめりだ。

 米韓が対話路線に転じ、北朝鮮核問題に関する6カ国協議国のうち唯一、金氏と会談していない安倍氏は危機感を持っている。加えて、夏の参院選を前に拉致・核・ミサイル問題に主体的に取り組む姿を示したい考えも透けて見える。

 孤立化を避けたい焦りを見透かされたままで、ただ会ったとしても問題解決への糸口を探るのは難しい。トップ同士がどのように向き合い、いかに具体的な成果を引き出していくかの戦略が重要になる。