認知症の人と家族は、症状の進行や介護現場の状況によって、大きな困り事に直面する。福祉の現場での勤務や親の介護の経験がある「認知症の人と家族の会」事務局長の鎌田松代さん(65)に、症状の進行とともに立ちふさがる四つの壁と解決の糸口を聞いた。

【通期】老いの悲しみとその人らしさを支える難しさ
 父が母に暴力を振るった時期がある。父が長年続けてきた農作業をできなくなった頃だ。鎌を研げなくなり、農機具小屋を眺めていた。できなくなった自分を見つめているようだった。認知症の人には失うつらさがある。
 宿泊サービスを利用した時、父は「なんで自分の家やのに帰れないのか。追い出そうとしている」と言った。グループホームに入居している義理の母は、交番に「私は監禁されています」と駆け込んだ。「助けに来て下さい」と紙に書き、ベランダから飛ばしたこともある。本人はそう感じ、そう見えている。
 
 介護職員から大事にされている、と感じると安心する。しかし、認知症の人は程度によって使うサービスが変わっていくため、施設が変われば職員とまた一からの付き合いになる。私は父や母が施設に入居するとき、思い出や趣味、好きな食べ物や嫌いな食べ物などを記した冊子を職員さんに渡した。父の人柄や娘である私の思いも自由記述欄に書いた。人生を知ることはケアにとって重要。症状が出る理由やケアの方法を知る手掛かりになる。ウェブサイト「きょうと認知症あんしんナビ」の「オレンジつながり手帳」をダウンロードして活用してほしい。

以下は目次

【初期】症状があるのに医療や福祉につながれない

【中期】自宅での生活が困難になる

【後期】特別養護老人ホームに入居できない

【通期】老いの悲しみとその人らしさを支える難しさ

【エピローグ】