京阪奈新線の延伸実現を訴えようと、近鉄京都線沿線に設置された看板。昨年新調した(精華町北稲八間)

京阪奈新線の延伸実現を訴えようと、近鉄京都線沿線に設置された看板。昨年新調した(精華町北稲八間)

 近鉄けいはんな線の学研奈良登美ケ丘駅(奈良市)から東への京阪奈新線の延伸を実現させようと、京都府精華町が誘致活動を加速させている。将来的に望ましい路線として示された国の答申から事業化の進展がないまま18年。新線構想が消えることも懸念される中、独自調査による提案や決起大会など、あの手この手で実現へ注力している。

 京阪奈新線延伸は、2004年の近畿地方交通審議会の答申で「中長期的に望まれる新たな路線」として位置づけられ、登美ケ丘駅から京都線・新祝園駅か高の原駅(奈良市)のいずれかを結ぶ2ルートが示された。しかし10年後、同審議会による答申の検証で、全く動きのない路線として現状の記述がゼロに。「これで尻に火が付いた」町は、新祝園ルートの誘致に本腰を入れ始めた。

 18年度に町と京都銀行で基礎調査を実施。近鉄京都線から新線を通じ、大阪メトロ中央線へ相互乗り入れする構想を提起した。19年には京都府と近鉄へ早期延伸を要望。町議会は全会一致で実施を求める決議を可決し、立地企業や町商工会でつくる「新祝園ルート整備促進協議会」を設立して決起大会を催すなど、オール精華町の態勢を構築。20年度にも事業化の調査報告をまとめた。

 ただ延伸の障壁は高い。まず2ルートのどちらを優先とするか決められていない。高の原駅のある奈良市と府県境を接する木津川市は高の原ルートを推しており、延伸実現へ「学研都市として一本化できていない」(町)のが現状だ。

 概算で約600億円という事業費の工面も課題だ。少子高齢化が進む中、全国どこでも地方・郊外の鉄道経営は厳しい。近鉄けいはんな線も赤字とされ「近鉄が自ら線路を引くことは厳しい」(関係者)という。事業費は国と府、町で分担することが想定されるが、国の特別な支援は不可欠。町としても今後開発が進む狛田地区を含む町内への企業誘致の促進で税収を伸ばし、その一部を整備費用に充てる計画だ。

 課題の一方で新祝園ルート構想に追い風も吹く。近鉄けいはんな線が接続する大阪メトロ中央線は25年の大阪・関西万博を見据えて会場の夢洲までの延伸が計画され、京阪奈新線が実現されれば京都から夢洲が一本に結ばれる。コロナ禍で急減したが、旺盛なインバウンド需要を取り込んだ観光振興も見込まれ、町は京都市営地下鉄も組み込んだ列車の相互乗り入れを提案。京都-大阪間の新たな観光路線を訴える。

 コロナでいったん延期となったが、近く決起大会を再度催す予定で、京都市や生駒市など構想上の沿線自治体も初めて招待する予定だ。他方で新祝園駅近くのPR看板を新調し、子ども向けに下敷き制作を企画するなど、住民を巻き込んだ機運醸成も図る。町幹部は「延伸が町単独の利益ではなく学研都市全体の発展に寄与することを重点的に訴えたい」としている。