トレーナーの伊藤瑞花さん(京都市南区)

トレーナーの伊藤瑞花さん(京都市南区)

 30日の大阪ハーフマラソンを最後に第一線を退く福士加代子(39)。陸上女子長距離で五輪に4大会連続出場という活躍を、所属するワコール女子陸上部のスタッフを中心とした「チーム福士」が支えてきた。トレーナーの伊藤瑞花さん(48)はその一人。福士を「かよぴー」と呼び、互いに心を許しあう間柄だ。

■スタバのフラペチーノ

 伊藤さんの最初の福士の印象は「面白くて気遣いのできる子」。選手寮の門限が迫る夜に2人で自転車でスターバックスコーヒーのフラペチーノを食べに行ったこともある。

 練習では監督の「1秒にこだわれ」の指示通り、必ず設定タイムを上回った。「本人は『早く練習を終わりたいから』と言っていたけど、本当に徹底していた」。連戦などで疲労がたまっても「たたいておけば治る」と、「痛みを消す」ほどの高い集中力に何度も驚かされたという。

 忘れられないのは2004年アテネ五輪前のスペインの事前合宿。子育て中で国内にいた伊藤さんに突然、福士から電話がかかってきた。

■「どうやって走ったら…」涙

 だが長い沈黙。しばらくして「足痛くなって、どうやって走ったらいいかわからない」と泣き始めた。伊藤さんは「初めての五輪でプレッシャーを感じていたのだと思う」。キャリアを重ねるごとに試合ごとの重圧は強くなり、近年の駅伝では輸送バスの中で泣くことが多くなったという。

 福士と永山監督の間に入る「橋渡し役」も担ってきた。「ともに勝負師で照れ屋でもある」との印象。厳しい練習が終わった後、永山監督に「今日は褒めてあげてくださいよ」と進言したことがある。監督は渋りながらも「がんばったじゃん」と福士に一言。すると福士は「どうしたの?」と照れながら受け流した。伊藤さんは「2人とも素直になってほしい」と温かく見守る。

 福士の現役ラストレースには「息子より長い付き合いなので『本当にやめちゃうの』という感じ」と率直に話す。引退後に向け、「かよぴー、普通に生きるって大変だよ」とエールを送る。