米国のトランプ大統領が、中国からの輸入品2千億ドル(約22兆円)分に対する制裁関税の税率を、10日に10%から25%へ引き上げる方針を表明した。対象は中国からの輸入品の約4割になる。

 中国も報復として、米国からの輸入品の関税を引き上げる可能性が高い。

 貿易戦争再燃の懸念から、7~8日にかけて世界の株式市場は大きく値を下げた。世界の景気を押し下げかねない状況だ。

 米中両国の貿易協議は一時、合意が近いとも伝えられ、トランプ氏も進展を認めていた。

 しかし、中国による技術移転の強要問題が動かないことに、トランプ氏がしびれを切らし、強硬姿勢に転じたようだ。

 2020年の米大統領選に向け、支持者に対中強硬姿勢をアピールする狙いもある。

 米メディアによると、米中交渉の最終局面とされた4月末の協議で、中国が技術移転強要を防ぐ法整備の約束を撤回したという。

 中国は3月、国会にあたる全国人民代表大会で強要を禁止する法律を採択していた。報道が事実なら、中国の対応は不可解だ。

 とはいえ、それで国際貿易のルールに違反する制裁関税強化が許されるわけではない。世界経済に対する大国の責任を忘れてもらっては困る。

 この間の関税引き上げで中国内の景気減速は著しい。米国でも農産物や牛肉の対中輸出が停滞し、農家の経営に打撃を与えている。

 それでもトランプ氏が強硬なのは、雇用統計などが好調なためだが、大型減税が奏功しているとの見方が強い。制裁の応酬はいずれ米国内にマイナスの影響をもたらすのではないか。

 気になるのは、関税に関するトランプ氏の主張だ。

 トランプ氏は5日のツイッターで「米国に支払われた関税のほとんどは中国が支払った」と書き込んだ。輸入関税が上がれば、その分は自国の消費者の負担になることが多い。トランプ氏の説明には無理がある。

 中国に打撃を与えた、と言いたいのかもしれないが、事実に反する説明は、トランプ氏がメディア批判の際に口にする「フェイク(偽)ニュース」そのものだ。

 中国で製造し米国に輸出する日本などの企業にも制裁は影響する。各国は両国に対話を呼びかける必要がある。

 米中閣僚級協議が9~10日にある。歩み寄ってもらいたい。