親が必要な範囲で子どもを戒めることを認める「懲戒権」を削除し、体罰の禁止を明記した民法改正の要綱案を、法制審議会(法相の諮問機関)の部会がまとめた。

 「しつけ」と称して虐待が正当化されている問題の根底にある考え方を見直すものだ。

 子どもを怒鳴ったり、たたいたりする行為は暴力であり、決して許されない。心身の成長にも強い影響を及ぼす。

 子どもを一人の個人として尊重するという認識を、社会全体で共有しなければならない。

 懲戒権は、1898年施行の明治民法から続く規定だ。「監護」(世話)と「教育」の範囲内で親権者が行使できるとされており、「しつけ」の根拠とされてきた。

 見直しは、2018~19年に東京都目黒区の船戸結愛(ゆあ)ちゃん=当時(5)、千葉県野田市の栗原心愛(みあ)さん=同(10)=が亡くなった虐待事件が相次ぎ、社会問題となったためだ。

 19年6月に成立した改正児童虐待防止法で体罰禁止が明文化され、当時の法相が民法の懲戒権見直しを法制審に諮問していた。

 要綱案では、身体的な暴力を加える体罰のほか、暴言や育児放棄など「心身の健全な発達に有害な影響を及ぼす言動」も許されないと明記した。子の人格の尊重に加え、年齢や発達の程度に配慮する義務も盛り込まれている。

 子どもの視点に立った教育の在り方を明確に示しており、評価できよう。

 だが、親による虐待事案が増加しており、しつけの名の下で暴力に寛容な風潮は根強い。

 20年度に全国の児童相談所が児童虐待として対応した件数は20万5千件を超え、統計開始以来30年連続で最多を更新した。

 厚生労働省が21年に公表した調査結果では、体罰を「場合により必要」として容認する人が約4割に上っている。

 民法改正を機に、子どもへの体罰や暴力を許さない文化を醸成し、虐待の抑止につなげなければならない。

 児相の現場では、子どもの成長や教育に悩む親からの相談が多い。子育ての悩みやストレスが虐待につながらないよう、国や自治体などは相談体制の拡充など支援を強化することが重要だ。

 懲戒権の削除は、過去にも検討されながら、見送られた経緯がある。深刻な虐待問題に歯止めをかけるため、子育ての理念転換に向けた法制化を急ぐべきだ。