京都市が新町家の事例としてホームページで紹介している住宅(京都市左京区)

京都市が新町家の事例としてホームページで紹介している住宅(京都市左京区)

 京都市が京町家風の新築住宅「新町家」を広める取り組みを始め、間もなく2年を迎える。かつて類似の構想が不発に終わったことを教訓に、市民が気軽に建築を検討できる枠組みにしたが、制度上、普及の実績は見えづらく、協力業者もまだ少ない。今度こそ京都らしい街並みづくりの起爆剤になるだろうか。

 新町家は京町家の取り壊しが進む中、古都の景観に合った住宅を増やそうと市が2020年3月にガイドブックを公表して本格的に打ち出した。「場所になじむ」「和の技を感じる」など設計の際に重視してほしい五つの指針を掲げ、3階建てやマンションなどさまざまな様式を想定している。

 現代版の京町家を増やす構想は数年前にもあった。市が10~18年度に企画した「平成の京町家」だ。省エネ住宅の普及も兼ねて、最大200万円の補助金を交付したが、市内産木材の使用や透水性がある庭の設置など住宅に求める条件を細かく設定していた。結果、認定物件は75戸と当初目標の1%にとどまった。

 その反動もあり、新町家は市からの「提案」にとどまる緩やかな制度になった。趣旨に賛同する工務店などを「パートナー事業者」として認め、事業者と顧客が相談して思い描く新町家を建てる。その分、市が一軒ずつに「新町家」の認定を与えることはせず、補助金も支給しない。

 普及には業者の力が欠かせないが、約1年前から募集を始めたにもかかわらず現在のパートナー事業者は6社にとどまっている。市がホームページで紹介する施工事例もガイドブック公表前の物件がほとんどだ。ある事業者は「京町家風のこだわりを取り入れるとどうしても費用が高くなる。景観についてあまり理解していない顧客に勧めるには工夫が必要になる」と明かす。

 市まち再生・創造推進室は「新町家をブランド化したいわけではなく、京町家の知恵を現代住宅に生かすきっかけにしたい。パートナー事業者を増やし、施工事例を見て『こんな家に住みたい』と思う人が出てくれば理想だ」とする。