主権者教育と新聞の果たす役割について考えた京都府NIEセミナー (京都市中京区・京都新聞文化ホール)

主権者教育と新聞の果たす役割について考えた京都府NIEセミナー (京都市中京区・京都新聞文化ホール)

杉浦真理さん

杉浦真理さん

杉岡秀紀さん

杉岡秀紀さん

京都新聞の記事を例に、新聞が主権者教育の中でどう使われるかを話す杉浦真理さん。画面下は杉岡秀紀さん

京都新聞の記事を例に、新聞が主権者教育の中でどう使われるかを話す杉浦真理さん。画面下は杉岡秀紀さん

 「主権者教育とNIE(教育に新聞を)」を考える京都府NIEセミナーが1月31日、京都市中京区の京都新聞社であった。主権者教育の豊富な実践経験を持ち、ともに総務省のアドバイザーを務める杉浦真理さん(立命館宇治中高教諭)と杉岡秀紀さん(福知山公立大准教授)がオンラインで講演した。会場とオンラインを合わせ約50人が参加した。

 府NIE推進協議会は教育での新聞活用を目的に、府内の教育関係団体・行政や報道機関で構成し、セミナーは年1回開く。

 今回のテーマ「主権者教育とNIE」は、18歳選挙権の導入から5年がたち、教育現場で多くの実践がなされ、高校公民科で新科目「公共」が始まり、成人年齢の引き下げ、児童生徒へのデジタル端末配備が進む状況を踏まえて企画した。

 今年は府知事選、参院選など選挙が続く。若い世代が政治への関心を持ち、投票に向かうために大人はどうすればいいのか、そこに新聞の果たす役割はあるのか、などがセミナーの中心話題となった。

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 杉浦真理さんは「新聞と模擬投票―教科、総合学習展開」と題し、主権者教育の実践として、高校生が政党事務所を直接取材した高校の例を紹介した。取材を通じて生徒たちは政策だけでなく候補者の必死さ、事務所の忙しさなど「生の姿」に触れている。

 杉浦さんは立命館宇治高での実践を踏まえ「今の子は皆ネットで情報収集するが、それで得た情報は身につかない。じかに体験できるよう、新聞は選挙事務所の所在地を告知したり、政策討論会を主催するなどに取り組んでほしい」と提案した。また「紙だけでは若者には伝わらない。選挙や政治についての動画を作っては」とも呼び掛けた。

 物事を総合的に解説する新聞の姿勢は、主権者教育の現場でも有用だとしつつ「高校生には難解な記事も多い。興味を持ちやすいのは、争点別に各政党の政策を紹介するなど、ポイントの明確な記事。課題がはっきりすると投票したくなる」と指摘した。

 若い世代が関心を寄せるテーマの一つに、LGBTを含む性的少数者の人権問題を挙げ、昨年10月の衆院選時、この問題に対する主要政党の姿勢を列挙した京都新聞の記事(2021年10月22日付)などは「グラフも使用して分かりやすい。生徒が争点を探す役に立つ」と評した。

 「高校、大学生は自分探しに熱心になる年代。ある政党が自分と合うか、自分に近い政党がどこかなどの切り口だと関心を持ちやすい」とし、「新聞が主権者教育に果たす役割は大きいが、若い世代と接点がなさ過ぎる。生徒に新聞の存在を伝えるのは教員の腕の見せ所」とNIEの可能性を示した。

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 杉岡秀紀さんは「地域公共人材をつくる―主権者教育と探究学習」のテーマで話した。杉岡さんは福知山公立大で、地域の課題解決に取り組む大切さを伝え、人材育成につながる教育に力を入れている。

 主権者教育について「選挙だけを中心に考えるのではなく、普段から地域の身近な課題に意識を向けさせることが政治への関心の高まりにつながる」とした。大学からの教育では遅く、「まずは高校で、地域課題や政治に目を向ける教育に取り組むべき」と経験を踏まえて話した。

 グレタ・トゥンベリさんの活動に共鳴した高校生が、学校を1カ月休みCOP26の会場となったスウェーデンに行った記事を挙げ「同世代の活躍には高校生も共感するし、記事の高校生のように当事者意識を持つ人を増やすことが投票率を上げる」とした。

 半面、若者の多くが「政治に関心があると友人に知られたくない」という意識を持っているとの調査結果に触れ、「同調圧力の強い日本では、政治に関心のない人が多数派の場合、せっかく当事者意識を持ってもマイノリティーになってしまう」と指摘した。

 解決の糸口として、国・世界など大規模な面から物事を捉えるのではなく、身の回りや地域などの小さな課題に取り組む人を育てることで、意識は変えられるのではないかとした。高校・大学生が自分たちでイベントを企画した取り組みを紹介。大人は裏方に徹し、つくる側に高大生を立たせることで、与えられたものだけを見るのではなく、主体的に考える意識が育つと報告した。