京都検定1級に合格した長尾さん。全盲の視覚障害者では初めてだった(京都市山科区)

京都検定1級に合格した長尾さん。全盲の視覚障害者では初めてだった(京都市山科区)

勉強時にメモを取っているパソコン。自動の音声読み上げシステムなどを活用している(京都市山科区)

勉強時にメモを取っているパソコン。自動の音声読み上げシステムなどを活用している(京都市山科区)

 「京都・観光文化検定試験(京都検定)」の1級に、全盲の長尾博さん(63)=京都市=が合格した。多くのボランティアに支えられながら勉強を重ね、合格率11.4%の難関を突破。全盲の受験者の1級合格は初めてで、「目が見えなくても、京都の神社仏閣や歴史を楽しんでいることを知ってもらえたら」とほほ笑む。

 長尾さんは生まれつき右目が見えず、左目も強度の弱視。小学5年の時に網膜剝離を発症し、全盲になった。点字や音声情報で勉強を重ね、立命館大文学部史学科を卒業。滋賀県立盲学校で約30年にわたり教員を務め、現在はびわこ学院大非常勤講師として、視覚障害教育学や心理学を教えている。

 京都の街歩きが好きで、枯れ山水の庭園や建物の模型に手で触れることで神社仏閣を楽しんできたという長尾さん。2019年ごろから京都検定に挑戦しようと、公式テキストや過去問題集、関連書籍などを片っ端から読み、漢字や地図も含めた膨大な情報を吸収していった。

 支えたのは、ボランティアたちの地道な点訳作業だ。点訳サークル「点友会」(京都市北区)が既に点字データ化していた過去問題集5冊が大きく役立ったほか、「京都アルファの会」(同区)は地図などを点字化して支援した。数カ月をかけて、1級の問題集7年分を新たに点訳した個人ボランティアもいた。

 長尾さんは19年度、2級に合格し、20年度は1級に挑戦。支援者が問題を読み上げ、持ち込んだパソコンで回答する形式での受験だったが、試験終了間際にデータが消えるトラブルに見舞われ、悔しい思いをした。そして昨年12月の再挑戦で悲願の合格を果たした。

 21年度の1級合格者は受験者852人のうち、97人しかいなかった。受験を支えたボランティアの一人、平井達也さん(70)=山科区=は「熱意を持って勉強される姿を見てきたのでうれしい」と喜ぶ。長尾さんは「目的を持ち、歴史を調べ、何か触るものもあれば、見えなくても京都を楽しめる。名所旧跡の魅力を、視覚障害がある人にも発信していきたい」と力を込めた。

 長尾さんのブログ「ムツボシくんの点字の部屋」には、街歩き記録なども掲載している。