被害者の前に立ちはだかってきた「時の壁」を乗り越える判断が示された。

 旧優生保護法下で不妊手術を強いられたとして、聴覚障害のある夫婦と知的障害のある女性が、国に計5500万円の損害賠償を求めた訴訟の控訴審判決で、大阪高裁は旧法を違憲とし、計2750万円の賠償を命じた。

 国への賠償請求権が消滅する20年の「除斥期間」の適用を制限し、全国9地裁・支部に起こされた同種訴訟では初の賠償命令となった。

 憲法が保障する子を産み育てるかどうかを決める権利を強制的に奪われた被害者の救済に道を開いたといえる。

 判決は、違憲であることが明白な旧法を立法した国会議員に過失があると指摘している。「戦後最大の人権侵害」ともされる施策を長年続けた国や国会は、重く受け止めなければならない。

 これまでの6件の地裁判決は、旧法の違憲性に言及することもあったが、いずれも賠償請求を退けてきた。不妊手術から40年以上が経過しているため、壁となったのが除斥期間だった。

 だが、今回の高裁判決は、画一的な除斥期間の適用は「著しく正義、公平の理念に反する」と指摘。期間の起算点を手術時ではなく、旧法が母体保護法に改正された1996年とした。

 それでも2018~19年の提訴時には20年以上が経過している。高裁は、原告らが提訴の前提となる情報や相談の機会へのアクセスが難しかった事情をくみ取り、同種訴訟の提起を知ってから6カ月以内に提訴した原告の賠償請求権を有効と認定した。

 除斥期間の例外を認めた最高裁判例を踏まえて柔軟に判断した高裁判決は、国の施策や不作為による被害の救済の在り方を示したと言えよう。

 ただ、今回示された「同種訴訟の提起から6カ月以内」の基準だけでは、実際に救済されるのは一部にとどまる可能性もある。

 旧法下で不妊手術を受けた人は約2万5千人に上るとされる。一方、19年に成立した救済法で、320万円の一時金の支給が決まったのは966件のみだ。差別や偏見を恐れて声を上げるのが難しい実情もある。

 被害者弁護団などからは、金額の引き上げ、周知の徹底など法改正や運用の改善を求める声が上がっている。被害の実態に見合った救済策への見直しが求められる。