朝晩が冷え込むこの季節、のどの痛みや熱っぽさを感じ、市販薬で様子をみようという人は多いのではないだろうか。だが、スポーツ界では安易な市販薬の服用は厳禁とされている▼例えば風邪薬の中には、世界反ドーピング機関の禁止薬物リストにある興奮剤が、眠気防止で含まれている場合がある。服用後の検査で陽性反応が出れば、資格停止などの重い処分が科される▼選手には厳しいが、禁止薬物が検出されれば「違反」とするのは、明快なルールだ。ところが今、痕跡を残さない新たなドーピングが、スポーツ界の新たな脅威になりつつある▼「遺伝子ドーピング」と呼ばれる手法で、特定の遺伝子を筋肉細胞などに注入することで強い筋力をつくれる体に「改造」し、運動能力を高めるという▼植物の品種改良などで利用されている「ゲノム編集」技術の悪用だ。薬物ドーピングのように選手個人がすぐ取り入れるとは考えにくいが、国家の威信をかけ国ぐるみでドーピングに手を染めた例は過去にあった。広がる可能性は否定できない▼国際オリンピック委員会は来年の東京五輪で選手への遺伝子検査を検討しているという。飲む薬一つ一つに気を配り、真剣にトレーニングに励む選手までが疑いの目でみられないようなスポーツ界であってほしい。