人口が集中する東京で行われた東近江市の事業承継個別相談会。来場者が各事業者の説明に熱心に耳を傾けていた(東京都中央区)

人口が集中する東京で行われた東近江市の事業承継個別相談会。来場者が各事業者の説明に熱心に耳を傾けていた(東京都中央区)

 中小企業や小規模事業者で経営者の高齢化が進む中、後継者や外部企業への「事業承継」をどう推進するかが全国的な課題となっている。滋賀県東近江市などはこのほど、人口の集中する東京で後継ぎを探す全国的にユニークな相談会を実施した。後継者不在による廃業の増加が懸念されることから、国も相談拠点の設置や税制面での優遇など支援環境の整備に力を入れる。

 「あとつぎさん募集」。JR東京駅に近いビルの一室でこのほど、そんなキャッチフレーズを掲げた相談会が開かれた。参加したのは東近江市内にある小売や金属加工、農業などの8事業者。いずれも経営は黒字だが、後継者は決まっていない。

 訪れた人たちは各事業者のブースを巡り、業務内容などを熱心に質問していた。都内の自営業男性(33)は釣り好きが高じて滋賀への移住を考えているといい、「地元に根付いた会社に興味があった」と話す。

 滋賀県は雇用保険のデータを基に1年で廃業した事業所の割合を推計した「廃業率」が都道府県別ワースト1の4・9%(2015年度)。相談会を企画した市や地元経済団体でつくる実行委の藤野滋委員長は「地域のにぎわいが失われ、ものづくりの下支えもなくなってしまう」と危機感を募らせる。

 経営者の高齢化は今後いっそう進む見通しだ。国が統計や民間の調査をもとに推計したところ、全国の小規模事業者を含む中小企業経営者のおよそ3分の2にあたる約245万人が25年時点で70歳を超える見込み。うち半数は後継者未定で、現状を放置すれば廃業が相次ぎ、25年ごろまでに約650万人の雇用と約20兆円の国内総生産が失われると試算する。

 事業承継の推進に向けて国はこれまでに、専門家が相談対応を行う「事業引継ぎ支援センター」を各都道府県に開設。18年度からは承継時の贈与税、相続税をゼロにするなど税制面での優遇措置を始め、今後は支援に携わる金融機関や弁護士、税理士などの連携強化を目指す事業承継推進会議を全国8カ所で開く。

 10月に都内で開かれた同会議のキックオフイベントには安倍晋三首相がビデオメッセージを寄せ、「今後10年を事業承継の集中実施期間と位置づけ、過去に例のない大胆な政策を講じていく」と積極的な姿勢を強調した。ただ、税制優遇の対象に個人事業主が含まれていないなど支援のあり方には課題もある。

 東近江の相談会には2日間で計49人が来場した。今後は市商工会が個別の話し合いをサポートしていくという。事業承継の問題は悲観的な視点で語られがちだが、藤野委員長は可能性も感じている。「東京にはバブル期入社の50代が多い。新たな活躍の場として培ってきた人脈や知識を地域で生かしてもらえれば、既存の事業にイノベーションを起こせるんじゃないか」