年金の支給額が増えるのは、受給者にとって、ありがたいことではある。一方で、増額ばかりでは制度が持たないとの不安が、特に若年層において、高まるのではないか。

 国民年金に上乗せされる厚生年金について、改革案の骨格が固まってきた。

 所管する厚生労働省は、国民年金しか受け取れない人を減らすため、厚生年金の加入要件を緩和するとともに、働く高齢者の厚生年金を減額する基準を引き上げて、支給額を増やすことなどを、柱とする方針だ。

 来年の通常国会に、関連法案を提出する予定という。どのような改革となるのか、しっかりと見定めておきたい。

 要件緩和は、パートなど非正規労働者らの加入を促すもので、対象となる企業を、現在の「従業員501人以上」から、「51人以上」に広げる。新たに65万人が、受給できるようになる。

 老後の低年金を心配する人々には、朗報となる。

 ただ、保険料は、労使が折半することを忘れてはならない。

 緩和に伴い、企業側の負担は1590億円増え、中小企業の重荷になるとみられる。何らかの支援策を、用意すべきだろう。

 減額基準引き上げは、一定以上の収入がある高齢者の受給額を減らす「在職老齢年金制度」を、見直すものだ。

 65歳以上の場合、現在は毎月の賃金と年金の合計が、47万円を超える人が対象になっているが、これを「51万円超」とする。

 同制度は、高齢者の就業意欲を阻害していると指摘されており、その改善には、つながるのかもしれない。

 とはいえ、これを実施すると、年金を減額されるのは約41万人から約32万人に減り、支給額は年間で約700億円も増えるとされている。

 高所得者の年金減額を縮小することから、「金持ちの優遇」とも批判されそうだ。

 こうしてみていくと、加入要件の緩和、減額見直しともに、結果的に年金の支給総額を、増大させることになる。

 保険料を支払う現役世代の反発は、避けられそうもない。

 厚生年金制度の改正は、政府が唱える「全世代型社会保障」の確立に向けた取り組みの一つではなかったのか。

 今後は、世代間の公平を達成するという観点からも、議論を深めてもらいたい。