簡素なもてなし 引き立つ

松漆絵三つ椀(秀衡椀) 桃山-江戸時代 16-17世紀 =ごま豆腐・素麺瓜・わらび・山の木の芽 ※春季のみ展示

 MIHOコレクションの原点である茶道具から懐石の器をよりすぐって紹介する春季特別展「懐石の器 炉の季節」が19日から、甲賀市のMIHO MUSEUMで開幕している。7月9日からの夏季特別展「同 風炉の季節」と併せ、日本人の豊かな感性が生み出した名品と日本文化の美を伝える。

松漆絵三つ椀

 懐石は、禅僧が石を温めて懐に入れて空腹をおさえたとの伝承が由来で、お茶事の時の簡素で心のこもった料理をいう。禅の精神性とともに取り入れて形にしたのが千利休とされ、江戸時代中期頃には形式が整い、今日の姿となった。

 特別展は同館コレクションの始まりとされる茶道具や食器類のうち懐石の逸物を出品。会場を茶会に見立て、「席入り」から「後座」まで懐石の流れに沿って展観する。懐石は器と盛る料理を美しく取り合わせ、そこにも美をつくる。会場内では実際に日本料理を盛り付けた写真も並び、器の景色が楽しめる。

鼠志野向付 桃山時代 16世紀(鯛、防風、岩茸、山葵、醤油ジュレ)
白釉円孔透鉢 江戸時代 17世紀 御室窯
切子四方三段重 江戸時代後期―明治時代初期 19世紀 ガラス

 展示は約180件。鼠志野向付(ねずみしのむこうづけ)の代表格とされる桃山時代の傑作や野々村仁清の涼やかな白釉円孔透鉢(はくゆうえんこうすかしばち)、夏の朝茶で二重の重箱として使われた和ガラスの切子四方三段重など、細部まで技巧と趣向をこらした極上品ばかり。初公開は約30件で、世間にあまり知られていない「大井戸茶碗(ちゃわん) 銘小一文字(朝鮮王朝時代、16世紀)」は、近代の数寄者で有名な松永耳庵(じあん)が「大一文字」と追銘し「井戸中の井戸」と箱書きした天下の名品だ。市松文の描き込みが珍しい織部四方手鉢など上物の手鉢3品もそろう。

大井戸茶碗 銘小一文字(追銘 大一文字) 朝鮮王朝時代 16世紀
粉引鉢 朝鮮王朝時代 16世紀
織部四方手鉢 桃山―江戸時代 17世紀

 見どころの一つが近衛家当主で太政大臣などの要職を歴任し、公家茶道に通じた茶人の近衛予楽院(このえよらくいん)(1667~1736)のコーナーだろう。茶会記を基にして惜しげもなく逸品を使っていた当時の茶会を再現と展示でつづる。

杉平向付 近衛予楽院の献立再現(錦はんぺん、山椒、花塩、しき葛) 器と料理・祇園丸山

 大徳寺・大燈国師の墨跡や徳川家康が下賜したと伝わる宮島釜、織部や志野など美濃釜の向付、信楽や瀬戸、唐津、伊万里、備前の食器、本阿弥光悦と尾形乾山の茶碗、永田友治の蒔絵椀(まきえわん)なども展示する。

織部切落向付 桃山―江戸時代 17世紀 =鱧(はも)、オクラ、梅肉
絵唐津柳文輪花向付 桃山―江戸時代 17世紀 =鱚(きす)、穂紫蘇、岩茸、山葵、醤油ジュレ
備前火襷桃鉢 桃山~江戸時代 16~17世紀 =鱸(すずき)・すだち

 担当の東容子主任学芸員は「懐石の客となって器と料理を楽しんでほしい。日本の素晴らしい食文化と食器の文化を見直す貴重な機会では」と話す。春季と夏季で一部展示替えあり。

料理写真撮影・越田悟全



【会期】春季=3月19日~6月5日
    夏季=7月9日~8月14日。
    月曜と3月22日、7月19日休館(3月21日と7月18日は開館)
【開場時間】午前10時~午後4時(入館は午後3時まで)
【会場】MIHO MUSEUM(甲賀市信楽町田代桃谷300)=0748(82)3411
【入館料】一般1300円、高・大生1000円、中学生以下無料(20人以上は各200円割り引き) ※入館は事前予約が必要(詳細は同館ホームページへ)
【主催】MIHO MUSEUM、京都新聞