有待庵で現地確認する京都市などの行政関係者ら(20日午前11時45分、京都市上京区)

有待庵で現地確認する京都市などの行政関係者ら(20日午前11時45分、京都市上京区)

 現存が確認された大久保利通の茶室「有待庵」(京都市上京区)を巡り、京都市は部材の一時保存や移築の支援などに関与する方針を20日示した。この茶室をはじめとした未指定・未登録の文化財に対して市の関わりは限定的だったが、一歩踏み込む構えを鮮明にした。ただ保護と規制の仕組み、財源といった施策面の裏付けに乏しく、市の踏み込み方や具体策が試される。

 「指定や登録の文化財ではなくとも貴重な文化遺産がある。全力でできることを考えたい」。20日午前、有待庵の現地確認に訪れた市文化財保護課の中川慶太課長は、部材の一時保存や移築希望者への橋渡しに乗り出す方針を説明した。従来、文化財保護行政は国宝や重要文化財、市指定文化財、国登録有形文化財など「指定・登録」を主な対象にしてきただけに異例の対応となる。

 背景には未指定・未登録の文化財のうち、とりわけ数が多い幕末・明治維新期から戦後に建てられた「近代建築」が急速に消失している現状がある。

 市が2005、06年にまとめた調査では近代建築は1749件と横浜市や神戸市をしのぎ、「数から言っても他都市に比べて突出して多い」。だが明治維新から既に150年が過ぎ、建物の老朽化と観光・不動産の開発の流れが相まって、将来の指定文化財候補の登録有形文化財や注目度の高いヴォーリズ建築でも解体して新築する動きが出ている。

 これらを受け市文化財保護審議会は3月、今後の文化財行政の在り方を示す答申を市に提出。近代建築など未指定・未登録の文化財にまで射程を広げて「京都文化遺産」と位置付け、独自に施策を打つように求めていた。

 この答申に沿い、市は今回の橋渡しのような新領域に踏み出す構えを見せたとはいえ、「現時点では一般の行政サービスとして最大限できることを考える」(市文化財保護課)と予防線も張る。実際、関連する条例や財源の裏付けには乏しく、制度的な枠組みや担保は不透明だ。民間の不動産取引や市民の所有権の制限も絡むだけに、市の適切な関わり方や支援策が課題になる。