医療機関にサービスの対価として支払う診療報酬について、政府は2020年度の見直しで、全体の改定率をマイナスにする方向で検討に入った。

 医療費の抑制が狙いで、マイナス改定が決まれば、16年度と18年度に続き、3回連続となる。

 過去2回は、薬代などの「薬価部分」を大きく引き下げることで全体の改定率をマイナスにしており、医師らの人件費や技術料に当たる「本体部分」は、逆に引き上げている。

 政府は今回も薬価部分は引き下げる方針を示している。本体部分についても引き下げに踏み切るのかが、年末の予算編成に向け焦点となろう。

 診療報酬の財源は、税金と保険料、患者の窓口負担だ。改定率がマイナスになれば、国民の負担軽減につながる。

 財務省にとって、2年に1度の診療報酬改定は医療費削減の貴重な機会といえる。

 診療報酬の本体部分は、08年度からデフレ期も含めてプラス改定が続いてきた。医師らの人件費や物件費の水準が、一般的な賃金や物価水準に比べて高くなっている面はあるだろう。

 一方の医療機関側は、病院は経営難だとして、むしろ引き上げが必要と主張する。

 厚生労働省の18年度の「医療経済実態調査」によると、一般病院1施設当たりの利益率はマイナス2・7%で赤字だった。医師の働き方改革への対応や人手不足で、医療機関はさらなる人件費の引き上げや設備投資などの負担が避けられそうもない。

 薬価には公定価格と市場価格の差額分を機械的に調整する仕組みがあるが、本体部分にはそうした仕組みがない。最終的には「政治決着」に委ねられているのが現状だ。

 本体部分の改定を巡っては、自民党の有力支持団体である日本医師会が引き下げに抵抗して厚労族議員や官邸も巻き込み、医療費の膨張を抑えたい財務省との間で攻防が繰り返されてきた。

 厚労省は勤務医の負担軽減に取り組む病院の診療報酬をより手厚くするなど、医療現場の課題解決を促す制度を検討する。一方で、医療費を含む社会保障費は、高齢者の増加で22年度以降は急増すると見込まれている。必要なのは政治的な駆け引きではなく、医療の実態を踏まえた議論ではないか。

 診療報酬改定を、単なる利害調整の場としてはならない。