人道危機が深刻さを増している。

 ロシアによるウクライナ侵攻から1カ月がたった。軍の規模で圧倒するロシアだが、ウクライナ側が激しく抵抗し、消耗戦の様相をみせている。

 ロシアは住宅や学校など民間施設へ無差別攻撃を激化させ、子どもを含め市民の犠牲が拡大している。

 国内外への避難者は人口の2割以上の1千万人超に達し、耐え難い苦しみと不安の中にある。

 これ以上の悲劇を広げないため、一刻も早く戦火を止め、窮地の人々を救わねばならない。

 侵攻から日を追うごとに強まるロシア軍の残虐さは目に余る。

 強大な軍事力で短期に首都陥落を狙う目算が外れ、大半の要衝を制圧できない焦りだろう。南東部マリウポリでは激しい包囲攻撃を続け、親子らが避難中の劇場や産科小児科病院も破壊した。

 同市民だけで死者が3千人を超えると推計されている。国際法違反の市民への無差別攻撃がエスカレートしており、断じて許されない。

 両国は停戦交渉を重ねるも、領土の主権に関わる主張の隔たりは大きい。開設に合意した「人道回廊」も戦闘が続いて住民避難が進まず、大勢が取り残されている。

 ロシア側も投入戦力を10%以上失う痛手を負ったとみられるが、侵攻完遂の構えは崩していない。首都キエフを巡る激しい攻防戦の行方が懸念されている。

 戦局を打開するためロシアが生物・化学兵器を使う恐れや、核兵器使用の可能性も否定しない姿勢への不安も拭えない。

 これら非人道兵器を万一にも使用すれば、両国を含め欧州全体に破局的な結末を招きかねないことを深く自戒せねばならない。

 目的も手段も正当性がなく、自国も孤立と破滅に導く蛮行からロシアはただちに手を引くべきだ。

 「ロシアにさらに圧力をかけることで平和を取り戻せる」。ウクライナのゼレンスキー大統領は日本の国会での演説で協力を訴えた。

 対ロ圧力は、経済制裁の成否にかかっている。日米欧は国際的な資金決済網からの締め出しや輸出封じを進めているが、目の前の侵略を止められていないのが現実だ。

 原油、穀物の価格上昇など世界経済への打撃を警戒しつつ、実効性の高い制裁強化に幅広い国々の決意と結束を示さねばならない。

 逃れたウクライナ避難民の受け入れや人道的な支援に、日本は積極的な役割を果たしたい。