JR西日本が京都、滋賀を含む近畿圏の在来線で、最終電車の繰り上げを検討し始めた。深夜に線路設備の保守に携わる作業員の労働環境を改善するのが狙いで、2021年春にもダイヤ改定を行いたいという。

 利便性は損なわれるが、作業員確保や安全運行の維持を考えればやむを得まい。コンビニの時短営業など働き方が変化する中、働き手の過重な負担で成り立つ手厚いサービスの見直しを迫られているともいえよう。

 JR西によると、終電後から始発前の電車が走らない深夜に枕木の交換や線路のゆがみ補正などの作業を進めている。近畿圏の2府4県でほぼ毎日、平均約1500人が100カ所以上で従事しているそうだ。

 近畿圏の在来線で、午前0時以降に出発する電車は現在、京都発が8本、大阪発15本、三ノ宮発14本を数える。仮に各路線で大阪発の終電を午前0時に繰り上げれば、1晩当たりの線路保守の作業量を増やせ、作業日数を年間1割程度減らせると試算できる。その分、保守作業員が休める日を増やし、人材の確保につなげたいとの考えだ。

 国土交通省によると、建設業の従事者は55歳以上が全体の3割以上を占め、29歳以下は約1割。約10年後に大量離職が見込まれ、人材難は深刻だ。

 とりわけ深夜作業が多い線路保守は人材確保が難しく、働きやすい環境づくりは喫緊の課題といえよう。こうした労働環境の改善は、鉄道の安全運行にもつながるに違いない。

 終電繰り上げの背景には、夕方から深夜にかけてのJR利用の変化もあるようだ。

 京都駅では18年度の午前0時台の利用者数(平日平均)が13年度比で88%にとどまり、大阪駅や三ノ宮駅はさらに減少が目立つ。同様に午後9~11時台も利用が落ち込み、逆に早い時間帯の午後5~8時台の乗降は、京都、大阪両駅でそれぞれ7%増え、三ノ宮駅も4%伸びた。企業などで働き方の改善が進みつつあり、帰宅が早まっているのが要因とみられる。

 作業員不足は鉄道各社に共通する課題だが、「働き方改革」を掲げた終電前倒しはJRグループでは初の試みだ。「賛否両論、幅広い意見がある」(来島達夫社長)とはいえ、問題提起としては興味深い。

 ただ利用客にとって「得することは何一つない」といった反発が強いのも当然だろう。客足が遠のくのを懸念する深夜営業の飲食店は少なくなく、繁華街の活気を奪う恐れもある。

 京都や大阪への通勤、通学圏でもある滋賀の湖南地域などJR沿線では、深夜に及ぶ電車の運行など交通利便性がマンション需要などを促してきた。影響は大きく、利用客にどの程度の不便が生じるかを詰め、丁寧に説明する責任がある。さらに沿線自治体の要望にも耳を傾け、路線ごとの利用実態や地域事情への配慮が欠かせない。

 JRと接続する私鉄・地下鉄との調整も要る。利用客の理解を得られように、まずはメリットとデメリットをしっかり検証し、できる限り利便性を損なわないダイヤ改定を求めたい。