ロシアによるウクライナ侵攻が世界の食料供給にも大きな打撃となりつつある。

 「世界の穀物庫」と呼ばれる両国からの輸入が滞り、途上国の貧困層などが飢餓に直面する恐れが高まっている。

 日米欧の経済制裁に伴い、ロシア産のエネルギーなどの供給が減る影響も不安要素だ。

 幅広い物価の上昇が市民の暮らしを直撃し、世界的な景気の失速や社会不安が広がる懸念が拭えない。

 2022~26年に世界で最大1300万人が栄養失調になる恐れがある-。

 国連食糧農業機関(FAO)が、今回の侵攻による食料危機を警告した試算が衝撃的だ。

 ロシア、ウクライナとも農業大国で、世界の小麦輸出量の約30%を占める。トウモロコシや大麦、菜種油も屈指の存在だ。

 穀物価格は侵攻前から高値傾向にあったが、戦闘の拡大や港湾機能の被害などで供給の混乱が長引くとの見通しが上昇圧力となっている。小麦価格は2割超上がる可能性があるとして、FAOは警戒を強めている。

 既に影響が出始めている。エジプトはロシアとウクライナから小麦の8割を輸入しており、侵攻後に小麦粉が1割値上がりした。人口約1億人の3割が年収5万円以下の貧困層で、主食のパンの高騰に不安が広がっているという。

 同様に両国産小麦に輸入の5割以上を頼るのは中東、アフリカなどの26カ国に上る。一昨年に貯蔵庫爆発事故があったレバノンは供給量確保が綱渡り状態という。

 先進7カ国(G7)は先週の首脳会合で、世界的な食料危機の予防・対応のために行動することを盛り込んだ声明を採択した。

 生産国の囲い込みや投機的な買い占めで入手難が広がらないよう、世界の供給体制と価格の安定化や途上国などの支援に国際的な連携を強めることが不可欠だ。

 ロシアは天然ガス生産で世界2位、原油生産3位のエネルギー大国でもある。停戦が今後実現しても長期の経済制裁が見込まれる。燃料高による広範なコスト増が企業活動や市民生活を圧迫し、社会経済を不安定化させるリスクに留意しなければならない。

 日本でも輸入小麦価格が4月から17%余り上昇し、パンや麺類などの値上げが相次いでいる。当面の影響緩和とともに、食料自給率の低さを含め中長期の供給確保政策の見直しが必要だろう。