新年度が始まった日本経済の行方に厳しい見方が広がっている。

 日銀が発表した3月の企業短期経済観測調査(短観)で、主な指標である大企業の景況感が1年9カ月ぶりに悪化した。

 ロシアのウクライナ侵攻で原油や穀物の価格上昇が進み、新型コロナウイルスの感染再拡大による消費停滞も影響した。

 国内経済を支える大規模金融緩和策が、為替相場で円安を加速させ、一段の物価上昇を招くというジレンマに陥っている。

 企業収益や家計へのしわ寄せの広がりと長期化が、景気の腰折れにつながりかねない。

 最近の景況感を示す指数は、大企業の製造業、非製造業とも昨年12月調査まで続いた改善傾向から悪化に転じた。3カ月後の見通しも、製造業が5ポイント減、非製造業も2ポイント減と厳しいのも気掛かりだ。

 製造業は全16業種のうち9業種で景況感が悪化した。自動車や電気機械で部品の調達難が続き、食料品や化学も原材料高が響いた。

 仕入れ物品の値動きを示す2月の企業物価指数は前年同月比9・3%上昇し、過去約40年で最大の上げ幅だ。ウクライナ情勢に伴う供給不安から、ガソリンや金属、電力・ガス料金など幅広いコスト高が収益の重荷となっている。

 物価上昇に拍車をかける円安の進行は今週、一時1ドル=125円台と約6年7カ月ぶりの水準に急落した。日米の金利差の広がりが大きな要因といえる。

 インフレ抑制へ利上げを進める米国に対し、日本は大規模緩和を継続。運用に有利なドル買いは、日銀が異例の国債買い入れ「指し値オペ」で金利上昇の抑え込みを図ったことで一気に進んだ。

 従来、円は紛争、災害時の安全資産として買われたが、ウクライナ危機では見られない。輸入に頼る資源高の打撃が大きく、景気下支えの大規模緩和から抜け出せない日本経済の弱みを見透かされているといえよう。

 円安は輸出に有利だが、輸入物価の上昇は家計にも幅広く及ぶ。石油、小麦製品などの値上げが続き、個人消費を冷やす恐れがある。

 中小企業では3月短観で景況感のマイナス幅が拡大。コロナ禍で宿泊・飲食などの苦境が際立ち、感染再拡大の不安が付きまとう。

 政府は物価高への緊急対策を今月中に取りまとめる方針だ。国際情勢と経済構造的な要因から物価高が長引く恐れを考慮しつつ、必要な支援策と効果を見極めることが求められる。