夫婦の5・5組に1組が経験しているとされる不妊治療について、公的医療保険の適用が4月から拡大された。

 人工授精や体外受精など広く行われている治療が対象に含まれ、費用の自己負担額は原則3割で済むようになった。

 これまでは一部の検査などを除いて保険は利かず、高額の治療費がかかっていた。経済的負担が下がり、治療を受けやすくなると期待される。

 ただ、対象年齢や利用回数などに制限が設けられている。

 治療は長期にわたることもある。精神面のサポートや治療を受けやすい支援制度など、周囲の理解が欠かせない。

 不妊治療は、晩婚化の影響もあり、急速に普及してきた。2019年に体外受精で誕生した子どもは過去最高の約6万人で、この年に生まれた子の14人に1人の割合となった。

 治療費はこれまで医療機関ごとに異なり、体外受精は1回平均50万円かかった。保険適用で診療報酬として設定され、治療ごとに一律価格となることは利用者にとってプラスだろう。

 高額療養費制度を使えば、年収370万~770万円なら自己負担は月8万円ほどに収まるとみられる。

 体外受精と顕微授精については、治療開始時の女性の年齢を43歳未満とした。保険適用の回数は40歳未満は6回で、それ以上は3回までに限る。

 年齢が上がるほど妊娠率が下がり、流産する割合が高くなるためとされ、従前の助成金の条件を踏襲している。

 ただ、40歳を過ぎて治療に臨む人は多く、治療技術も向上している。年齢や回数の制限が妥当かどうか医学的な見地から議論を重ね、より適切な制度にしていってほしい。

 保険適用の対象外となった治療と組み合わせる場合は「自由診療」扱いとなり、費用が増すケースも想定される。保険適用の範囲や費用について丁寧な説明が要る。

 治療技術は医療機関によって差が大きいとして、不妊で悩む人の支援団体は年齢別の妊娠率など治療実績の公開を求めている。診療報酬は保険料や税金も充てられており、治療への信頼や透明性を高めるためにも情報開示を進めるべきだろう。

 保険適用は、これまで慎重な意見もあったが、2年前に政府が少子化対策として打ち出した。不妊治療は特別な治療から「一般的な治療」に位置付けられたといえる。

 ただ、治療は特に女性にとって心身両面で負担が大きいことに変わりない。回数を重ねても必ずしも妊娠・出産に至らないケースも少なくない。

 厚生労働省は治療内容や患者の悩みに応える「不妊症・不育症ピアサポーター」の養成研修を始めており、カウンセリングや相談窓口の充実が求められる。

 仕事との両立も課題だ。長期間に及ぶ通院などを想定し、国家公務員には有給休暇制度が新設され、民間企業でも同様の動きがある。

 治療を受けやすい環境整備を進め、研修などで職場の理解も広げていきたい。