「子育て環境日本一」の文字が躍る府のポスター。市内の駅などに貼られている(京都市下京区)

「子育て環境日本一」の文字が躍る府のポスター。市内の駅などに貼られている(京都市下京区)

保育スタッフに子どもを預け、仕事や作業に集中できる「オトナリラボ」。芳野さんは働く親たちの悩みや課題に日々触れている(京都市下京区)

保育スタッフに子どもを預け、仕事や作業に集中できる「オトナリラボ」。芳野さんは働く親たちの悩みや課題に日々触れている(京都市下京区)

 「京都府は子育て環境日本一を目指しています!」。会社員や観光客が行き交うJRや地下鉄駅構内に貼られたポスター。赤ちゃんを温かい目で見守るメッセージと共に、府の力強い宣言が踊る。

 市民はどう感じているのか。「日本一という言葉自体はよく目にするけれど、実感したことは無い。府が具体的に何をやってるかはなかなか伝わってこない」。小学生から高校生まで4人の子を育てる女性(41)=京都市伏見区=は率直に話す。

 4月からは長男が府立高に進学したが、授業に必要なタブレット端末の自己負担額は数万円。全額公費で賄う都道府県もある一方、京都府は上限2万円の補助にとどまる。公立中では給食が選択制で、味などの面から多くの生徒が弁当持参だったという。他にも課題を感じることは多いが、女性が行政に何より求めるのは「市民や府民の声を聞く姿勢」だ。

 自身は支援学校に通う四男を育てる中で、障害のある子も無い子も共に遊べる環境を求めて、市や府の職員に直接思いを伝えてきた。だが対応にはもどかしさを感じたこともある。「日本一の環境を目指すなら、行政と住民が一緒になって考える機会がほしい。財源がなくても、何かできることがあるかもしれないから」

■ギャップを感じる

 「集中してやりたいことがあっても、子どもを預けられる場所は少ない。一時保育やファミリーサポートも気軽には利用できず、困っている親は多いと感じます」。こう話すのは京都市下京区の子連れコワーキングスペース「オトナリラボ」の代表、芳野尚子さん(43)。スペースでは乳幼児を保育スタッフに任せ、親は別室で仕事や作業に没頭できる。職場復帰の準備をする人や、家業と育児を両立する人などの、多様なニーズを日々感じている。

 行政は働く親への支援策や制度を設けているものの、その情報が当事者である保護者にも十分に認知され、利用されているとは言いがたい。「日本一を掲げていても、子育てしやすい街という声を聞かないことにギャップを感じる」と話す芳野さん。官民が協力し、実践的な支援をしていく必要があると考えている。

■全国平均下回る

 府が近年力を入れてきた「実践的な」施策の一つが、企業や事業所が子育てしやすい職場環境を生み出すよう促す取り組みだ。テレワーク制度や、子連れ出勤に向けた職場内の託児スペース整備といった企業努力に対し、府は2019年度から最大100万円を補助している。特に補助額が大きいのが、年次有給休暇を時間単位で取得できる制度の導入だ。

 子どもの急な病気や送迎に対応しやすくなるメリットがあるが、厚生労働省の調査によれば、府内で同制度を導入する企業の割合は18年時点で15・7%と、全国平均の19%を下回っていた。

 ただ、近年は改善傾向がみられる。19~21年度に府の補助を受けて計30社が同制度を導入した。自主的に取り組む企業も多く、20年には導入企業の割合が24・5%に達した。

 府担当者は「子育てしやすい職場づくりは、人材の確保と定着につながる。府としても事業者に働きかけ、経営層の意識を変えていってもらうのが今後の課題だ」と話した。