素手で巨岩をよじ登る野田健太郎さん(京都府笠置町・笠置山)

素手で巨岩をよじ登る野田健太郎さん(京都府笠置町・笠置山)

急傾斜の巨岩をよじ登る愛好家(笠置町・笠置山)

急傾斜の巨岩をよじ登る愛好家(笠置町・笠置山)

 京都府笠置町で人気のボルダリングが、木津川の河原から笠置山にエリアを拡大しつつある。新たに開拓されたエリアはこれまで人が入らなかった手つかずの笠置山自然公園。ボルダリング向き巨石が100カ所近くあり、河原と違った別の楽しみ方ができると口コミやSNS(交流サイト)で広がっている。「笠置寺エリア」の5月以降の本格オープンを目指し、“石の国笠置”を新たにPRする取り組みが始まった。

 「めっちゃ面白いです。こんなにいっぱい課題がある所は近くにはまずないです」と興奮気味に話すのは、週1回のペースで訪れる愛好家の男性(43)。大阪から高速道路を使ってすぐだといい、即リピーターになった。ともに訪れた男性(44)も「登る人のためにちゃんと作ってくれていて、アプローチしやすい」と話す。2人ともこれまで河原エリアを何度も訪れたが、今は山のとりこに。同じ花こう岩ながら、水に洗われた河原とは岩の肌触りも異なる。巨石の数が河原の2倍あるだけでなく、初心者から上級者まで難易度別に分かれた課題が多く、何度も楽しめるのが魅力だという。

 笠置寺エリアの開拓は2018年、府のスポーツ観光聖地化事業を活用して始まった。笠置寺の拝観ルートからそれたエリアに入ると、これまで野生動物しか通らなかったような傾斜面が続く。京都笠置クライミングクラブ代表理事の野田健太郎さん(44)らが登れる岩を調査しながら、地元住民らとともに階段や土のうを整備。六つのエリアに分けてルートマップを作製した。

 「誰も知らない場所だった。(石が)2~30ほどあるかなと思っていたが、ここまでとは思っていなかった」と、野田さん自身驚いたという。新エリアの開拓は、河原を訪れる人が年々増えてきたことが背景にある。「分散させないと厳しいと思っていた。人が入っていないエリアを活用して、一つの観光資源として活性化できるのでは」と意気込む。

 一方、現在はまだ社会実験中で、公にはなっていない。昨年11月にプレオープンという形でひっそりと始まり「知る人ぞ知る」エリアとして口コミやSNSで広まった。町によると、社会実験中に消防や警察と安全面を確かめ、手探りで始めていったという。

 プレオープン後は月平均300人が訪れ、町も今後の観光の起爆剤になると予測する。担当者は「河原だけだと、どうしても日帰り。エリアが拡大することで滞在型となり町の宿泊施設や事業者への波及効果が期待できる」と話す。

 かつて笠置山を訪れる観光客は参拝目的の高齢層が多かった。現在はキャンプやカヌーだけでなく、ボルダリング用マットを背負った若者が多く訪れるなど、地の利を生かしたアクティビティの需要が生まれつつある。ボルダリングのシーズンは11~3月の湿気の少ない冬。河原は風が吹き霧が出るなどしてコンディションが崩れることもあるが、山は梅雨以外は登れるという。人口減が続く笠置町で、新たな観光需要の掘り起こしを狙った動きが今後加速しつつある。