円相場の急落に警戒感が強まっている。

 外国為替市場で一時、1ドル=126円台まで下落し、約20年ぶりの円安ドル高水準となった。

 世界的なインフレの抑制へ米欧が金融引き締めに動くのに対し、経済回復が弱い日本が取り残され、円売りにつながっている。

 急激な円安は輸入価格の上昇に拍車をかけ、国民生活を圧迫しつつある。9年に及ぶ大規模金融緩和から抜け出せない日本経済の足元を見つめ直す必要があろう。

 円安の急伸は、日米の金融政策の違いから金利差の広がりが投資家らに意識された要因が大きい。

 米連邦準備制度理事会(FRB)は先月、マイナス金利を2年ぶりに解除して利上げを決定。新型コロナウイルス禍への危機対応を終え、記録的な物価高騰を止めるためだ。年内にあと6回利上げ予定で、欧州を含め金融正常化のピッチを早めている。

 これに対し、日銀の黒田東彦総裁が13日の講演で大規模緩和の継続を強調したことで、運用に不利な円の売りが一気に進んだ。政府の「口先介入」も不発で、打ち手の乏しさを市場に見透かされているようだ。

 2013年導入の大規模緩和は、大量の資金供給で通貨安に誘導し、有利となる輸出の主導で経済回復を目指す狙いがあった。

 だが、成長力の低迷が続いているのに加え、経済構造の変化で20年前と同じ円安でもマイナス面が目立っていることは見逃せない。

 本来は追い風となる自動車など製造業も、海外生産が進んだことで円安の恩恵が薄れている。一方でエネルギーや原材料の輸入依存は根強く、「(円安の)デメリットの方が大きい」(三村明夫日本商工会議所会頭)との経済界の認識も踏まえる必要がある。

 円安による物価上昇が家計や企業収益を直撃し、個人消費への悪影響が続く恐れがある。

 中小業者らのコスト増加分の適切な価格転嫁を進めると同時に、物価高に見合う労働者の賃上げを広げて経済循環につなげる取り組みが重要だろう。

 国内経済を支える大規模緩和策が、円安・物価高の打撃を招くというジレンマの克服に正面から向き合うべき時だ。長期金利の上昇を一定容認するなど柔軟な運用を提言する専門家の声もある。

 金利上昇は1千兆円規模に上る国の長期債務の利払い負担増につながる。財政健全化への議論も避けられない。