三和駐在所を訪れた地域住民らと話をする(左から)木下警部補と妻・香織さんたち=福知山市三和町

三和駐在所を訪れた地域住民らと話をする(左から)木下警部補と妻・香織さんたち=福知山市三和町

 「駐在さん」とその家族が地域で暮らし、住民の安全を守る駐在所。京都府警では、必ず男性警察官と妻が一緒に赴任し、妻が夫の仕事を手助けしてきた。しかし、全国では、単身赴任や女性警察官、独身者など多様なスタイルが広がる。府警も今春、家族帯同での赴任が難しい警察官が増えたため、初めて単身赴任を認めることになった。

 そもそも、なぜ京都の駐在所では「男性警察官と妻」の勤務が前提とされてきたのだろう。それは、警察庁が長年にわたり「配偶者を同伴した勤務員の配置に努める」と通達していたからだ。このため、府警でも「単身赴任」や「独身」は過去になかった。

 駐在員の妻は、警察官がパトロールに出かけている間の応対や電話取り次ぎをし、広報誌づくりや防犯活動の手伝いをすることも。万一の事態を想定し、不審者対応のため「さすまた」の講習なども受ける。妻に対しては月7万5千円の報奨金が支払われる。

 ただ、「駐在員を支える妻」というスタイルは、家族観の多様化や共働き世帯の増加で、全国的に難しくなっている。京都新聞社が取材したところ、京都以外の45都道府県警(宮城は回答せず)は単身勤務を認めている。警察庁の通達も、2019年に廃止となった。

 お隣の滋賀県警は、30年以上前から単身者の駐在所があり、近年は数十カ所に上る。駐在員の不在時は、外付けのインターホンや電話から直接警察署につながるようになっている。女性警察官が着任(和歌山県警)していたり、警察官夫婦がそろって駐在員として赴任したり(埼玉県警)するケースもある。

 京都府警も今春、6カ所の駐在所に、初めて単身赴任の警察官を配置した。「妻が仕事をしている」などの理由から家族が同行できない警察官が増え、従来通りの運用では全ての駐在所に警察官を配置できなかったため、認めざるを得なかったという。

 しかし、府警は「地域に密着した活動をするため、家族同伴が望ましいという考えは変わらない」と強調する。では、駐在所に妻がいるメリットはどれほどあるのだろう。

 のどかな農村にある福知山市三和町の三和駐在所を訪ねた。木下敦志警部補(43)と妻香織さん(40)は、幼い娘2人とともに、17年4月から赴任する。結婚当時、香織さんは保育士として働いていたが、駐在所勤務を希望する夫の力になりたいと退職した。

 取材時、近くに住む女性(80)と友人が「スマホの使い方が分からへん」と駐在所を訪れた。香織さんが事前に電話で話を聞いていたため、敦志さんにスムーズに伝わり無事に解決した。警察官の本来の仕事ではないかもしれないが、女性は「いてくれると安心する。子どもたちも来てくれて活気が出た」と喜んだ。

 警察活動に詳しい京都産業大の浦中千佳央教授(警察学)は、「妻側の人脈や学校活動を通じ、児童虐待やDV(ドメスティックバイオレンス)など、可視化されにくい問題も把握できる」と「夫婦」のメリットを挙げた上で、「家族のあり方が多様化する中、単身勤務の増加はやむを得ない。しかし、駐在所のあるエリアは過疎地も多く、地域の安全にとって唯一の拠点。態勢の変更は、住民と対話して進めることが大切」とする。