天然酵母のパン

天然酵母のパン

天然酵母のパンを作る高福さん。減塩やパンの硬さといった客の要望にも応える(城陽市市辺)

天然酵母のパンを作る高福さん。減塩やパンの硬さといった客の要望にも応える(城陽市市辺)

 のどかな田畑に囲まれた自宅敷地内のスペースで、高福恵美(たかふく・えみ)さん(48)=京都府城陽市=は3坪ほどの天然酵母のパン屋「にじの木」を営む。品種改良されていない古代小麦や地元産の新鮮な野菜など、健康のため素材にこだわり抜いてパンを焼き上げている。来店客との会話が弾み、「店が揺れるぐらい笑うこともあります」。


 元々はご飯派で、小麦のアレルギーがあった。10年ほど前、オーガニックを学ぶグループの活動がきっかけで、自家製の酵母を使った体にやさしいパンづくりに目覚めた。


 小規模のパン教室を開き、赤ちゃん連れの母親らから人気を集めた。自店を持つ夢を何度も見たが、なかなか決心できずにいた。そんな中、新型コロナウイルスの影響でパート先の接客業の仕事がなくなった。「パン屋をやらない人生や、パートに戻る人生は後悔する」と考え、2020年4月末、晴れて地元でオープンした。


 「できるだけ敷居を低く」とのコンセプトで構えた店は、木の温かみがあふれている。アレルギーへの配慮でバターや卵、牛乳を使用していない食パンや、新タマネギやサツマイモなどの野菜をふんだんにトッピングしたパンが並ぶ。農家が真っ赤になった状態で持ってくるというトマトや、福祉作業所の製品も依頼を受けて置いており、「直売所みたい」と言われることがある。


 客の好みや要望に応じたパン作りもこだわりの一つ。歯が悪いため軟らかいパンを注文した客は「これからも続けてほしい」と機材を寄付した。「アトピーで食が細い子どもがパンをにぎって離さない」と喜ぶ両親にも出会った。客が感謝を口にする度、高福さんは「素材の良さが役立ってうれしい」と感じる。


 パン作りの傍ら、「今のところ少数派」というオーガニックの魅力を発信する目標もある。「畑で古代小麦を育てたり、発酵食品を作ったりして、みんなで生きる力を付けたい」。