公文書は民主主義の礎だ。政策決定を検証し、歴史に学ぶ。薬害事件など痛ましい被害の補償にも、当時の行政記録が証しになる。今を生きる私たちの考えや願いを未来に届けるためにも、公文書は将来世代に手渡さねばならない。

 公文書を電子媒体で作成管理するよう、各省庁は今月から管理規定を見直した。紙に印刷した原本に代わり、電子文書が基本となった。業務上の電子メールなども含む。デジタル化推進に向け、政府は公文書管理のガイドラインを改正した。

 公文書をデジタル化すれば、紙に印刷した簿冊に比べ、保管場所を取らない。オープンデータ化すれば地方自治体の政策立案や、学術研究にも資する。

 情報公開手続きや国立公文書館への移管も迅速化が期待できる。東京都内の国立公文書館や外交史料館への資料一極集中を避け、地方からもアクセス可能になる。

 廃棄された記録は、二度と戻らない。旧優生保護法による強制不妊手術でも、国や都道府県が公文書のほとんどを廃棄し、被害を検証できなくなった。被害者の受けた傷は一生続く。

 公文書デジタル化は、長期の大量保存を可能にする。慌てて廃棄する必要はないはずだ。デジタル記録の改ざん防止策を講じた上で、紙が公文書だった頃にできた公文書管理法に基づく廃棄ルールは、見直すべきだ。

 20日の公文書管理委員会で2020年度公文書管理状況が報告された。国機関の行政文書は約1915万ファイルあり、電子媒体は12%だった。

 国や国所管法人の文書記録は「5年で廃棄」「30年で公文書館へ特定歴史公文書として移管」などと保存期間を設定するよう定められている。20年度に保存期間が満了した行政文書約300万ファイルのうち9割が廃棄された。公文書館などへ移管されたのは、わずか0・4%に過ぎない。

 何が廃棄されたのか、公文書管理状況報告には記載がない。

 省庁の公文書名や保存期間について、政府はポータルサイト「e―Gov」で検索可能とする。しかし、国民が知りたい行政文書に簡単にたどり着けるページになっていない。

 e―Govで京都関係の公文書ファイル名を検索すると、保存期間満了後に廃棄とされた行政文書の中に、廃棄していいのか疑問に思うものもある。

 環境省の第二名神環境アセスメントも、京都での鳥インフルエンザでの陸上自衛隊行動命令(2004年)も、鴨川沿いの劣悪な住環境で暮らした在日コリアンらの「四〇番地」問題関係とみられる電子媒体の国土交通省文書も廃棄予定となっている。

 環境や健康に関する記録は後世に影響が出る可能性も想定し、記録を残すことが望ましい。廃棄は所管省庁ではなく、国民や研究者が広く公文書にアクセスして判断できる仕組みが要る。国立公文書館やアーカイブ担当者の人員も増やし、未来へデジタル公文書を伝えるための基盤づくりに注力してほしい。