子どもの安全確保に、また新たな課題が突きつけられた。

 川崎市多摩区の路上でスクールバスを待っていた小学生らが包丁を持った男に襲われ、2人が死亡し、17人が重軽傷を負った。痛ましすぎる事件に、言葉もない。

 刺した男は十数秒間に次々と切りつけたとみられ、大勢の殺害を狙った可能性があるとみられている。犯行直後に自殺しており、動機を解明することは困難だ。

 極めて特異な事件といえるだけに、対策を講じるのは簡単ではない。しかし、手をこまねいている場合ではない。犯行の経緯を検証して教訓を引き出し、再発防止につなげる努力を、社会全体で探っていかなければならない。

 今回、衝撃だったのは、徒歩通学より安全とされてきたスクールバスを利用する児童たちが狙われたことだ。盲点だったといえる。

 過去に下校中の女児が殺害された事件を受け、文部科学省も路線バスをスクールバスとして積極活用する方針を打ち出していた。

 同省の調査では、スクールバスを利用する小学生の割合は2015年度には約16%と、10年前に比べてほぼ倍増した。私立小では約45%にもなる。少子化による学校の統廃合で、通学距離が延びていることなどが背景にある。

 通学路の安全点検は小学校の99%、保護者や住民による見守り活動は幼稚園・小学校の84%で実施されているとのデータがある。スクールバスも学校生活の延長線上にあると考え、点検や見守り活動を拡充させるべきではないか。

 ただ今回の事件では、児童に付き添っていた保護者の男性も犠牲になった。通常の見守りに加え、バスを待つ方法や乗降の仕方にまで踏み込んで安全策を考える必要がある。

 神奈川県警は「通り魔殺人」の疑いも視野に捜査している。確たる動機もなく不特定の人に危害を加える行為は後を絶たず、防ぐことも難しい。

 08年6月、東京・秋葉原の歩行者天国に元派遣社員の男がトラックで突っ込み、ナイフで襲撃して7人が死亡した事件はいまだ記憶に新しい。「誰でも良かった」と身勝手な動機を供述している。

 社会へのいらだちが他者へやいばを向けるきっかけになっているなら、その原因をなくすことが必要だ。政府はきのう、通学路の点検などを指示したが、凶行を生み出した背景について多角的に分析し、効果的な政策につなげていくことも政治の責任である。