1967年の「布川(ふかわ)事件」(茨城県)で再審無罪が確定した桜井昌司さん(72)が国と県を相手に起こした国家賠償請求訴訟で、東京地裁は、警察の違法捜査や、公判での警察官による偽証、検察の証拠隠しなどの違法行為があったと認めた。

 裁判長は国と県の責任を認め、違法行為がなければ「遅くとも控訴審で無罪判決が言い渡され、すぐに釈放された可能性が高い」と指摘した。

 捜査機関の違法行為のために、桜井さんは30年近くも自由を奪われたということだ。

 無罪となった元被告の国賠訴訟で国の責任を認めるのは異例で、検察の証拠開示のあり方を違法とする判決は初めてという。

 検察と警察は判決を重く受けとめる必要がある。同時に、証拠の積極的な開示など、具体的な改革を進めるべきだ。

 桜井さんは公判で「自白を強要された」などとして無罪を訴え最高裁まで争ったが、78年に無期懲役が確定し、服役した。

 96年の仮釈放後に再審を請求し、2005年に水戸地裁で認められ、11年に無罪が確定した。

 国賠訴訟を提起したのは、検察が再審決定に対し控訴しなかったのに、過ちを認めず、謝罪もしなかったからだ。

 裁判では、元の裁判で検察が捜査側に必ずしも有利にならない捜査資料などの証拠提出を拒んだことや、警察の捜査手法の適法性が争点となった。

 東京地裁は「証拠は有利不利を問わずに出す責務がある」と指摘し、証拠開示をしなかった検察の姿勢を違法と断じた。

 冤罪(えんざい)が認められた過去の裁判でも、検察が捜査証拠を独占したり、都合良く選んで法廷に提出することが度々問題となってきた。

 刑事訴訟法の改正などで公判前整理手続きが導入され、証拠開示が行われるようになっているが、再審請求審では全体として証拠開示は進んでいない。

 判決は「検察官は公益の代表者として事案の真相を明らかにする職責を負う」とした。証拠開示の重要性を強調したといえる。

 警察の捜査についても、警察官が取り調べで桜井さんにうそを言って自白を迫ったと断じた。公判で警察官3人が行った証言も、再審請求審の新証拠により虚偽だったと認定した。

 裁判所が、捜査機関による組織的な偽証があったと認めた。県警や検察は説明責任を果たす必要がある。