京都市内の保育士養成校卒業生の進路

京都市内の保育士養成校卒業生の進路

保育士の有効求人倍率

保育士の有効求人倍率

 大型連休後に関連法案が成立し、10月から実施見込みの幼児教育・保育の無償化を巡り、京都市が頭を悩ませている。保育利用が「必要十分」な状況にとどまるよう、利用時間が短くなれば保育料が軽減される独自策を講じてきたが、無償化では全国一律で11時間が対象となり、「利用人数はもちろん、利用時間も掘り起こされる」と、保育現場への影響を懸念している。

 保育時間は国の区分では11時間の標準、8時間の短時間のみで、利用料金の差は大きくない。市は標準時間の利用世帯について独自に、11~8時間の間を30分単位で細分化し、保育時間が短くなれば利用料が3%ずつ軽減される仕組みを以前から導入し、軽減費用は市が負担している。

 この施策は近年の保育士不足も背景にある。京都府内の保育士の有効求人倍率は2017年度2・53倍と、5年間で3倍以上に跳ね上がった。しかし11時間が保育無償になると、午後6時に子どもを迎えに来ていた保護者が「午後7時でもいいか」と、必ずしも必要ではない時間まで利用する可能性があるという。

 市保育園連盟の副理事長で、吉祥院こども園(南区)の井上直樹園長(68)は「無償化でどれだけ保育時間が増えるかは見通せないが、保育士の応募が希望人数に達しない現状では、対応するのは相当困難だ」と打ち明け、「国には保護者が長時間労働をしなくてもいい社会づくりなど、抜本的な対策を講じてほしい」と語る。

 市議会も昨年10月、「無償化にあたっては保育現場への影響や働き方改革などを勘案し、保育短時間のみを無償にすべきだ」との意見書を国に提出したが、効果はなかった。市担当者は「国は無償化の対象にする11時間の内訳を勤務8時間、昼休憩1時間、通勤2時間とするが、関東地方の基準だ。京都市では2時間の通勤者が大多数ではない」と困惑する。

 また、無償化の対象には認可外保育所も含まれ、3分の1以上が保育士といった国の指導監督基準を満たしていない場合も経過措置として5年間は無償となる。市は「監督体制の再検討が必要になってくる」としている。

■保育士獲得競争激しく、あの手この手 宿泊付きツアーやUSJ年間パス購入費も

 京都市は本年度、幼児教育・保育無償化による保育現場への影響を抑えるため、都市間の保育士獲得競争に本格参入する。志望者向けの保育園見学ツアーを行い、他都市在住者には宿泊付きで、市内の文化観光施設の見学も交えたツアーを企画してアピールする。大阪市も大阪府外から新規採用された保育士にユニバーサル・スタジオ・ジャパン(USJ)の年間パス相当額などを支給するなど、競争は激しさを増している。

 京都市は保育士養成校の学生や有資格者の「潜在保育士」を対象に、複数の民間保育園を巡る見学ツアーを今夏に10回程度計画している。市が昨年実施した市内保育園の若手保育士へのアンケートでは、現在の園に就職した理由として「先生の雰囲気や通勤場所がよかった」「保育方針が自分に合う」など、現場を見たことが決め手になったという回答が多かった。しかし、個人で見学を申し込むのはハードルが高く、市が機会を提供することにした。

 大学や短大などが多い京都市は保育士養成校に比較的恵まれているが、人材獲得は容易ではない。保育士資格取得者のうち22%が他の業界に就職するほか、他都市に人材が流出するケースも多い。そのため、首都圏など他都市在住者向けに宿泊型のツアーも今夏に1回設け、複数の園見学に加えて市内の文化観光施設も回り、古都の魅力を感じてもらう。

 ただ他都市も攻勢をかける。大阪市は本年度から、大阪府外から市内で新規採用された保育士を対象に2年間、USJの年間パス購入費2万5千円に加え、帰省費用として近畿圏外は6万円、圏内は2万円を上限に支給する取り組みを始めた。神戸市も市内で保育士に採用されると、7年間で最大160万円の一時金を支給する事業を18年度に始めている。

 ある自治体の担当者は「給与面などの処遇は国が一律的に改善してほしい」と自治体間競争に伴う消耗戦の行方を懸念する。