在日米軍の駐留経費負担、いわゆる「思いやり予算」について、トランプ米政権が日本政府に対して、現行から5倍の増額を求めていたことが明らかになった。

 日本の駐留経費負担は2019年度予算で約1974億円に上っており、要求額は単純計算で9800億円を超える。

 日本側は非現実的だとして拒否した。当然の対応だ。極めて不当で一方的な要求であり、政府には毅然(きぜん)とした姿勢で臨んでほしい。

 米側は直近の数字を示していないが、04年の米国防総省報告書によると、日本は思いやり予算を含めて米軍駐留経費の74・5%を負担している。イタリアや韓国、ドイツなど他の米国の同盟国に比べても、負担率は突出して高い。

 そもそも、思いやり予算で日本が支出している米軍の経費は、本来、米側が負担すべきものだ。

 1978年度に始まった支出は、円高や対米貿易黒字などに配慮した日本側が「思いやりを持って対処する」とし、基地従業員の福利費用などを肩代わりしたのが始まりだ。87年度以降は特別協定を結び、基地従業員の労務費や光熱水費なども出している。

 今回の大幅な増額要求は、来年11月に大統領選を控え、日本から譲歩を引き出して外交成果を得たいトランプ氏流の「交渉術」だとする見方もある。

 懸念されるのは、日米安全保障条約を「不公平」と公言するトランプ氏に対し、日本政府がこれまで米国の軍事装備購入で応じていることだ。トランプ氏の就任以降、ステルス戦闘機F35や垂直離着陸輸送機オスプレイなどの導入を次々と決めている。

 海外駐留米軍の撤退や縮小を公約に掲げ、同盟・友好国に負担増を求めるトランプ氏の狙いが、自国経済の振興に向けた「米国第一」主義にあることを、日本政府は忘れてはならない。

 日米安保条約は米国に日本の防衛義務を課し、日本は国内で基地を提供すると定めている。在日米軍は日本の安全保障だけでなく、米国にとってもアジア太平洋戦略を担う重要な存在といえよう。

 その在日米軍の法的地位や基地運用の詳細を定めた日米地位協定では、米兵らが刑事事件を起こしても起訴まで日本の警察に引き渡されないなど、不平等が解消されていない。

 「安保ただ乗り」論で揺さぶる米側に対し、日本政府は、公平な負担とは何かを正面から議論する契機とすべきではないか。