小春日和の休日、陽気に誘われて甲賀市の信楽焼産地を訪ねた。NHKの連続テレビ小説「スカーレット」の影響もあってか、陶芸の森一帯の駐車場は観光客らで時間待ち状態だった▼陶芸館への坂道を歩くと、歩道脇にさまざまなデザインの火鉢が並ぶ。明治から戦後にかけて主力製品となり、最盛期の昭和30年ごろには全国生産高の9割を占めたヒット商品である▼ドラマの中でも、生産が需要に追いつかず、絵付け職人が足りない場面が出てくる。新柄を作るには、従来の釉薬自体の装飾だけでなく、絵付けの絵画的センスと技が必要とされたようだ▼信楽には戦前、地元で「絵かき」と呼ばれる絵付け師が2人しかいなかった。そこへ京都から森岡弥太郎さんという清水焼職人を招いたことが絵付け火鉢を大々的に売り出す原動力となった、と信楽古陶愛好会の資料集にある▼もっとも、中世以来の信楽焼の主役は、絵付けも釉薬も用いない焼き締めである。地元の土を薪(まき)で高温焼成して生み出される温かみのある緋(ひ)色と自然釉の味は独自の位置を占めてきた▼スカーレットとはその緋色をさす。主人公のモデルとされる陶芸家の神山清子さんが長年目標にしてきたのも、伝統の「炎の色」である。信楽焼の魅力の再発見につながるドラマになればと思う。